元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1743回
中国は「ガン温熱療法」の先進国

「ガンの転移は抑制できるのか?」
第5のガン治療として注目されている
全身温熱療法(全身ハイパーサーミア 
WBH=Whole Body Hyperthermia)
の話の続きです。

ちなみに、遠赤外線による全身温熱療法は、
ルカ病院ルーク・クリニックの竹内晃院長などが始めて、
15年とまだ歴史の浅いものです。
温熱療法といっても、1960年代は温水浴やパラフィン浴などで、
単純に熱伝導に頼るため、
熱くて安全な治療は難しかったそうです。
1980年ころには、体外循環による血流加熱が主流となりましたが、
血液を一度外に出すために血小板障害を起こし、
リスクの多いもので普及せず、
1990年になって、より安全性と効果を高めた
遠赤外線加温装置が開発されたそうです。

5月12日(土)、東京・中野のサンプラザで開かれた
「第11回全身ハイパーサーミア研究会」では、
主催者の竹内晃医師の講演に先立って、
全身ハイパーサーミアの最新型加熱装置に
ついても講演がありました。
講師は、竹内医師と共に、
15年間、装置開発と改良を続けてきた、
株式会社ブラストの下崎勇生さんです。
全身ハイパーサーミアは、MRIやCT検査のときのように、
患者が仰向けに寝て、
ドーナツ状の輪に入るスタイルに似ています。
この場合は、筒状のカプセル加温器の中に寝て、
遠赤外線加熱を受けるわけですが、
最新型の画期的な改良ポイントは以下の2点――、
(1) TPM(Thermal Phase Modulation)
    加熱制御方法
(2) 全方位輻射式の加熱カプセル「ピュ―パ=繭」の開発
    これにより、安全で定量的な加熱が可能になった
    というのです。
「TPM(Thermal Phase Modulation)加熱制御方法とは、
熱エネルギーを周期変化させながら、
生体の加温を最適に調節できる装置。
これで、温度差のある皮膚温と直腸温のバランスを考えて
加温自動周期を算定できるようになりました」

「また、現在の主流である遠赤外線加熱技術では、
仰臥位(仰向け)の人体に対して
上面から体表前面に加熱しますが、
これでは、胸部の加熱が皮膚温と心拍数を上昇させる危険が高い。
そこで筒型のカプセル内の寝床部分をナイロン製のネットとして
そこに仰向けに寝てもらい、人体の前面と背面から加熱する。
この全方位輻射によって、
バランスよく全身加熱ができるようになりました」

さて、もうひとつ興味深い話を聞きました。
「この最新加温カプセルは、竹内先生たちが北京大学とも協力して
中国・上海欣盛航空工業投資発展公司と共同開発したものです。
中国では、すでに20台の最新型が稼動し、
膨大なガン治療報告がなされています。
日本では、まだまだ認知度が低いわけですが、
いまや中国が集学的な温熱療法の先進国なわけです」
なんと、新しい医療の分野でも、
技術立国ニホンのお株が奪われそうだという話です。

ちなみに、最新型のカプセルは、
蚕の繭(まゆ)のような形にデザインされたため
患者をやさしく包み込むという意味合いを込めて、
竹内先生が「ピュ―パ」=繭(まゆ)の中の蛹(さなぎ)」
と名づけたそうですが、
頑迷固陋な日本の医療界にも、やっと、
患者サイドに立った21世紀型の
ガン治療技術革新が始まったようです。

竹内医師のルカ病院とは、
「癒しに満ちた診療を目指して聖書の中の医師『ルカ』」
からとったそうですが、
とても熱心で、やさしい先生です。
温熱の医学的解説については「いのちの手帖」第3号に、
「がんと温熱の話」
というエッセイでわかりやすく解き明かしています。
温熱療法の原理に興味のある人は読んでみてください。
また、6月6日に東京・新宿で開かれる、僕たちの
「スローヘルス研究会」でも講話をお願いしています。


1 http://www.luke.co.jp/


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2007年6月5日(火)

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