第1732回
大いなる心に抱かれる
これからの長寿情報化時代は、「自らの蔵書」=
「MY蔵書」を作るための選択力を磨くことが
ますます大切になってくる――、
その「MY蔵書」の作り方のポイントは
「古典に学ぶ」ことにある――、
40歳を過ぎたら「夭折」より「長命」作家の本を再読しよう――、
学生時代に読んだ哲学書や歴史書、
小説、随筆も再読してみよう――、
きっと、あなたの魂を進化させ、死の恐怖も乗り越える
「大いなる心(精神)」のエネルギーに抱かれる
幸運を掴めるはずだ――と言う話の続きです。
もちろん、親鸞や老子の本も興味深い知恵が詰まっていますが、
哲学者ならプラトンからベルクソン、
科学者ならダーウイン、アインシュタイン、
作家ならゲーテやトルストイ・・・
創造的なスピリチャルな世界を
見せてくれる長命な「叡智」の古典は、
西洋にもたくさん残っています。
40歳から「魂が進化する」から「身魂心」を丸ごと磨こう・・・
などと提案すると、
すぐ、東洋の神秘哲学の世界に没入する人、
短絡的に宗教に頼る人、
また反対に、こうした心霊世界は
いかがわしいと敬遠する人がいます。
しかし、じっくりと考えてみてください。
いまのように、身体性=物質至上主義や
機械妄信主義が席巻したのは、
長い長い人類の歴史の中で、
ほんの近代100年から200年なのです。
それ以前のいわゆる近世、中世、まして古代の世界では、
洋の東西を問わず、「身魂心」を丸ごと磨こう!という
ホリスティックな学問や発想が
連綿と研究され続けてきたわけです。
とくにギリシャ哲学の発する西洋哲学には、
宇宙自然と人間のいのち学について、
論理的に解明されたものが多いですから、
あなた自身のこれからの
「情報選択力の基盤」になることは間違いありません。
また、ドイツの作家・トーマスマンは
「ゲーテとトルストイ」というエッセイの中で、
同じ天才作家でも、シラーやドストエフスキーよりも
ゲーテとトルストイの方が
「自然の高貴性」があると述べています。
その理由は「シラーの天才もドストエフスキーのそれも、
地上の一角を霊験あらたかな霊場とはなしえませんでした。
彼らはあまりに若くして死にました。
彼らは、ゲーテやトルストイのように
長老的年齢に達することが出来なかったのです」と。
さて、80歳を超える長命の哲人の中には、
東洋にも西洋にもヘビーで知的な存在と精神がひしめいています。
たとえば、ギリシャの哲学者・プラトン(Platon・紀元前427−347)
「哲学の教育を受けた優秀な人物が国政を担うべきだ」とする
哲人政治の理想を説いた人です。
「知を愛し、魂をできるかぎり善くせよ」という
師ソクラテスの哲学を弁証することから始まる。
「対話編」という大著があり、
その高邁な哲学が種々語られていますが、
プラトン (著)《ソクラテスの弁明》を読むだけでも、
いまの時代に通用する
「いのち学」の知恵がたくさん詰まっています。
「大事にしなければならないのは生きることではなくて、
よく生きることだ」
「死を恐れるということは、
知らないことを、知っていると思いこんでいることだ。
なぜなら、死を知っている者は、誰もいないからだ。
ひょっとすると、それはまた、
人間にとって一切の善きもののうち、
最大のものかも知れないのだ」。
いま、巷の書店に溢れている、短絡的な成功本や養生本より、
なんと、魂にずしりと答えるメッセージが発信されている
と思いませんか?
ソクラテスの言葉を借りてプラトンは「無知の知」の大切さ、
つまり、僕流に意訳してみれば、
物質至上主義や似非科学主義にこりかたまった
人間の「知ったかぶり」に警鐘を鳴らしているのだと思います。
体(身体性)のみならず、
魂(感霊性)を進化させることによって、
内なる宇宙である心(精神性)のエネルギーが高まり、
外界の根源的な精神エネルギーと共鳴する――、
そして、こうした人間は宇宙自然の
大いなる心に抱かれる「安穏」を掴むことができる・・・
そうしたことをプラトンは伝えているのだと、僕は感じました。
なお、一口に「プラトンを読む」
といってもなかなか難解ですから、
格好の入門書としては「プラトンの哲学」をお勧めします。
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