第1720回
「病院はもっとも危険な場所?」
「患者漂流―もうあなたは病気になれない」
という新刊新書の話の続きです。
著者の中野次郎医師の見解では、
日本人ほど「入院好き」の民族は少ないそうです。
「OECD(経済協力開発機構)が発表する統計を見ても
入院による患者の「平均在院日数」は、
アメリカ、スウエーデンが約1週間、
ドイツ、フランス、イタリアが10日前後、
お隣の韓国が約2週間であるのに対し、
日本は、なんと約40日前後です」
と比較しています。
なぜか? 著者は以下の3つの理由を挙げています。
1・患者の「甘え 体質」
2・病院の経営上の理由
3・国民皆保険制度の弊害
そして、この「日本人の入院好き」ほど、
いのちを危機に陥れるものはないと、警告しているところが、
この本のポイントです。
「病院は天国ではない」
「病院ほど危険なところはない」と思えというわけです。
なぜならば、「病院とは、病める人々が集まることによって
『抗生物質耐性菌』が繁殖する
大変恐ろしいところだからです」と指摘して、
できるだけ「早く退院する心得」を勧めています。
ちなみに、本書には以下のように
「長期入院による危険」の数々が箇条書きで掲載されています。
*
●これだけある、入院による「危険」
(1)病院食による食欲不振、運動不足、脱水状態など
(2)隔離による孤独、不安、恐怖
a ノイローゼ、ストレス性胃潰瘍(集中治療室の患者に頻発)
b 睡眠不足
c うつ病、幻覚、認知症
(3)寝たきり
a 下腿深部の静脈の血栓
b 骨粗しょう症
c 起立性低血圧症――転倒
d 床ずれ
f 便秘
(4)院内感染――インフルエンザ、肺炎球菌、
ブドウ球菌、腸球菌、カンジダ真菌
(5)薬漬け――副作用
(6)アルコール、タバコの禁断症状
*
どうでしょうか?
ご家族のガンの治療や、ご両親の認知症による介護などで、
思い当たる人は多いと思います。
著者は「特に、お年寄りの場合は危険が伴う確率が高いので、
治療が終わり次第、一日も早く退院させるべきです」と、
この「患者漂流」時代の病院利用の知恵を解いております。
また、「日本人は病院で長くケアを受けることに
満足するばかりでなく
『神様が与えてくれた休息』と称して、
手術後もまるでホテルにでもいるかのように」考えていることが、
間違っていると警告しているのです。
病院の実態、医療制度の実態をしっかりと見据えて、
自分の命は自分で守る心がけを持つ・・・
なかなか耳の痛い話ですが、
これが、本当の意味での「患者が主役」の医療だと
この本は教えてくれているわけです。
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