第1541回
読書の秋!「いのちの本」10選 (2)
いまや、インターネットで、自分で文章を書くのが当たり前。
“一億総作家”とでもいったらよい時代だというのに、
本家本元の本の大半が、
著者が喋ってゴーストライターが書くという
いわゆる「語り書き」の手法に安穏としている・・・、
これでは説得力に欠ける、いや書籍の売上が激減するわけだ――、
読書の秋に、じっくりと読む本が少なくなっている
という話の続きです。
というわけで、
いま、発売中の「いのちの手帖」第2号には、
秋の夜長に、内容も文章もじっくり楽しめる、
いのちの本・10選を「本の愉しみ」
というコーナーで収載しましたので、
以下、まだ、読んでいない人たちのために紹介しておきましょう。
内容は、もちろん、
バナナの叩き売り式のマニュアル本ではありません。
心に染みる文章と内容が楽しめる
「いのちの本」を推奨してあります。
*
●ゆったりと“魂”の散歩を愉しむ本
「僕の東京地図」
(安岡章太郎・著 世界文化社 ほたるの本)1890円
「東京」を語ることは「昭和」を考えることという随想12篇に、
豊富な古写真を添えて構成した、
新刊のビジュアル・エッセイ集。
「後の日のかたり草の種ともならばなれかし」
と書いた永井荷風の随想、
いや開化期の浮世絵師・小林清親の光線画も
彷彿とさせる心休まる名品。
作者と共に“昭和の東京をゆったりと散策する”ことは、
ただ子供の頃の懐かしさだけでなく、
己のいのちの系譜までさかのぼる、
そうした“魂の散歩の愉しみ”に誘ってくれることだろう。
●生への意欲を奮い立たせてくれる
「生還の記」
(三木卓・著 河出文庫 )714円
心臓の壮絶なバイパス手術を克服して12年。
詩人、児童文学者としても多くの作品のある
芥川賞作家・三木卓さんは、小児麻痺(ポリオ)に始まって
腸チフス、敗血症と様々な難病を経ているが、
「生還の記」は心筋梗塞との闘いと
生への意欲を淡々と綴った、まさに名著。
とくに文庫版のあとがきに、
「病後、体調不良があっても心配することはない、
その分、年をとったということだ。
したがって目下は元気ということになる」
とあるのが印象的。
著者の生き方とゆるやかな日常を綴る「鎌倉日記」
(1・2巻、かまくら春秋社2100円)もおすすめ。
●悩み苦しみをゼロにする方法はあるか?
「釈迦の教えは『感謝』だった」
(小林正観・著 風雲舎)1429円
《釈迦は、この世の悩み・苦しみの根元は
「思いどおりにならないこと」と見抜いた。
だから、
「思いどおりにしようとしないで、受け容れよ」と言った。
「思いどおりにしよう」としないで、
「受け容れる」ための釈迦の教えこそ、自分が楽になる方法だ。
その究極の教えは「ありがとう」に尽きる》という、
じつに平易な処世指南書。
《釈迦は、2500年前に、この構図を発見し、
般若心経の形で残した》としてユニークな視点から、
般若心経を分かりやすく説き起こしているので、
このお経を改めて勉強してみたい人にも必読。
*
ちなみに、芥川賞作家の三木卓さんは、
自らの心臓疾患から糖尿病までの近況を綴った
軽妙なエッセイ「患者のこころ〜目下 クスリ怪獣」を、
同じ「いのちの手帖」第2号に書いておられます。
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