元週刊ポスト編集長・関根進さんの
読んだら生きる勇気がわいてくる「健康患者学」のすすめ

第1478回
土屋繁裕医師、逝って1年

この9月になると、49歳の若さで亡くなった
土屋繁裕医師のあの屈託のない笑顔を思い出します。
「僕はガン患者の代理人になります」と、
患者の味方を宣言した勇気ある人で、
いまだもって、その急逝は残念至極でなりません。
日本で始めて、
ガン専門相談所=キャンサーフリートピアを創設した、
人情味溢れる外科医でした。

このコラムでも、何度も紹介していますから
ご存知の方も多いでしょうが、
この長寿災難時代の中で、患者がしっかりと延命力を掴むには、
患者だけでなく、家族、そして心ある医師との
信頼関係が欠かせません。

では、心ある医師、患者が信頼できる医師とは
どんなタイプの医師でしょうか?
もちろん、医療技術に長けていることは基本条件ですが、
「患者の寂しさがわかる」医師こそ、
「患者の家」=病院にふさわしい医師だと思います。

筆者の主宰するスローヘルス研究会は、
さまざまに複雑な症状を持つガン患者の集まりですが、
幸いにも、からだの治療だけでなく、
「からだ(身体性)、こころ(精神性)、いのち(霊性)」という
人間丸ごとの調和を診る、
ホリスティックな考え方の医師に恵まれました。

ひとりが、小誌「いのちの手帖」の監修者でもあり、
日本ホリスティック医学協会会長の帯津良一博士です。
理論、実践ともに、
この画期的な医学の日本の草分けというだけでなく、
その人間的な魅力に満ちた医師です。帯津医師に会ったり、
診察を受けた経験のある人なら、
誰でもが実感するはずですが、
じつに「患者の寂しさ」をわかって、
治療相談にのってくれる笑顔が「仏様」のような医師なのです。
患者さんの中には、先生に会うだけで
「気分が良くなる」という人さえいます。

この帯津医師を「笑顔の抗ガン剤」とすれば、
僕は「喋る抗ガン剤」ですよと、ジョークを飛ばしたのは、
「僕はガン患者の弁護士です。代理人です」として、
キャンサーフリートピア※1という、
ガンの治療相談所を開いていた土屋繁裕医師でした。

ちなみに、帯津良一医師を「いのちの観音様」とすれば、
土屋繁裕医師は「治療の月光仮面」のような人でした。
16年間、癌研病院で700人近い患者を執刀してきた
ベテラン外科医ですが、
西洋医学から代替療法まで、
最新治療の応用には人一倍熱心な医師で、
患者の質問にも嫌がらず、速射砲のように答えてくれる、
話術のおもしろい人情派の医師でした。
実践派の人でしたからスローヘルス研究会メンバーから
多くの信頼を集めていました。

ところが、物事はそうそううまくは運びませんでした。
残念なことに昨年九月に過労のためにくも膜下出血で倒れ、
35日間の闘病の末に急逝されたのです。
ガン患者の「代理人」という正義の味方を失って、
僕たちはハンマーで頭を打ち砕かれるような衝撃を受けました。
しかし、多くの患者が待望した「ガン患者の代理人制度」という
土屋医師の信念は、いま、長兄の土屋繁之院長、盟友の三好立医師、
さらに奥さんで看護師の土屋広見さんが
担当の役員となって受け継がれたのです。

そして、気丈にも悲しみを克服された、
土屋広見さんから、「いのちの手帖」第2号に、
「夫・土屋繁裕の一周忌、パパのすべてを守り続けます」と題する、
珠玉のエッセイをいただきました。
ぜひ、関係者はもちろんですが、
多くの患者と家族の方々にも読んでいただきたいと思います。


※1  http://cftopia.com


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2006年9月13日(水)

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