第1362回
長寿災難時代
この長寿難病時代を生き抜くには、
ただ医師や病院頼みにはできないから、
患者学を一人一人が持つべきだ――、
僕たちが提唱している
スローヘルス患者学とは、
いかに悔いのないいのちを掴むか?、
納得した人生を掴むか?
そのための「創造的延命学」である――、
このコラムでは、なんども
患者主役の闘病の心得、
さらに、スローヘルス患者学の理論と実践について述べてきました。
「ガンそのものでではなく、治療で死ぬ患者が増えている」
いかがわしい「ガン・バイブル本」商法の摘発には、
大騒ぎするマスコミも、
肝心の医療問題の深奥追及には及び腰のところが多いですから、
こうしたストレートな表現はいたしませんが、
長くガンと闘ってきた患者、
また、拡大手術、連続大量抗ガン剤の投与の末に、
苦悶した患者の家族なら、
「ガン治療死」への疑惑は
常に心の隅にこびりついて離れないものです。
これに加えて、院内感染による死亡、
医療過誤による事故死が後を絶ちません。
先日、日経新聞に以下のような記事が出ていました。
「2005年の1年間に国立病院や大学病院など
主要な272施設から報告された医療事故は1114件で、
うち143件(12.8%)が死亡事故だったことが8日、
財団法人日本医療機能評価機構の集計でわかった。
重い障害が残る恐れのある事故も159件(14.3%)、
軽い障害が残る恐れのあるものは594 件(53.3%)に達した」
ガンの患者は、溢れる情報洪水の中で
溺れそうになっているのが現実です。
周到に、情報収集をし、
医師にインフォームドコンセントを求め、
別のいい医師がいると聞いたなら、
セカンドオピニオンを求める――、
よほど、自分を確かにして、
この人生最大の危機に対処しないと、
せっかくの長寿謳歌時代を
長寿災難時代、いや長寿寝たきり時代として
泣き寝入りしなければならなくなります。
さて、医療事故報告は、やっと、04年10月から
改正医療法施行規則に基づいて
主な医療施設に義務づけられたそうですが、
まさに、こうした情報を聞けば聞くほど、、
「医師は神様」「病院は天国」などと妄信はできないわけです。
もちろん、医療事故の証拠をそろえて、
警察に届け出たり、係争するケースも増えていますが、
その患者さん本人と家族の精神的、
経済的な負担は計り知れません。
ちなみに2005年に
全国の警察に届け出があった医療事故・事件は214件。
刑事事件として立件したのは91件だそうで、
事件数では1997年の10倍以上という高い水準といいます。
というわけで、
健康な人には、ちょっと、実感し難く、また、
まどろっこしい話に聞こえるかもしれませんが、
僕は、声を大にして、このコラムや
季刊「いのちの手帖」といった小さな雑誌を通じて、
「スローヘルス患者学」
(創造的延命学)のすすめを説いているわけです。
「長寿災難時代」とは、
「明日はわが身」の問題だからなのです。
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