第813回
『冬のソナタ』そして『女子十二楽坊』・・・
このコラムでは、いつもガン治療を考えるときに、
西洋医学の立場からだけではなく、
大いに東洋医学のよさも見直すべきだ――と
強調してきました。
手術や抗ガン剤だけという
機械の部品を修理するよう手法だけでは治らない――
中西医結合というか、
ホリスティックの(人間丸ごとの)
治療のすすめについて述べてきました。
医療だけではありません。
戦争、政治、経済、金融、情報・・・
あらゆる地球上のシステムに欧米の論理が浸透してはいますが、
政治にしても、経済にしても、文化にしても、
もちろんライフスタイルや生命について、
一人一人の心の中では
逆に東洋の感性や論理を見直す機運が
高まっていると思いませんか?
明治以来、欧米化システム思想のもとに、
西洋起源のものであれば先進、
東洋起源のものであれば未開という考え方が
凌駕しているわけですが、
それだけではすまない事柄が
あまりにも多くなってしまったと
いえないでしょうか?
たとえば、
いま、『冬のソナタ』という韓国ドラマをはじめとして、
「韓流」が、日本の若者や女性の間で
大きなムーブメントになっております。
うちのカミさんなどもどっぷりハマっております。
人気の秘密は、主演スターたちの美貌や
スタイルにあるのでしょうが、
そればかりではないと思います。
欧米ズレ?した日本の若者や女性たちが感動したのは、
そのストーリーやせりふの中に
東洋回帰をうながす、
せつない感性が隠されているからではないでしょうか?
さて、韓国人の感性の代表的な特徴は、たとえば
“恨”(ハン)“情”(チョン)といわれますが、
愛、恋、名声、家族、友人そして命・・・
人生のトラブルに立ち向かうとき、
恨みを他人ではなく自分に向けて乗り越える“恨”、
他人と同じ気持ちを共有しようとする“情”――
こうした韓国人特有の情感の純粋さや
恋や愛のせつなさに、
日ごろ、日本人が忘れてしまった、
“人肌の感性”を思い出したのではないでしょうか?
すべてが、冷たく合理的にデジタル処理されていく
世の中だからこそ、
東アジアの風土に育っている僕たちの心には、
昔懐かしいアナログの感性や論理が懐かしく、そして有難く、
見直されているのではないでしょうか?
ま、異論はあるかもしれませんが、
韓国だけではありません。
中国からやってきた美女楽団の『女子十二楽坊』が
ミリオンアーティストの仲間入りしたのも、
胡弓の音色に東洋人の感性がうずくからではないでしょうか?
僕たち夫婦は、先日、アジア回帰というか、
東洋的な温故知新の気分に浸りたくなって、
とつぜん、昔、仙人が住んだと伝えられる
中国の霊峰・黄山(こうざん)に登ってきました。
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