第756回
チベット医学の医師になるには?
チベット医学の医師・アムチ・ギャッツオさんの
講演会で熱心に交わされた
質疑応答の続きです。
Q:季節、時間による脈の変化は考慮するか?
A:考慮している。
医学、占星術は一体のもので、
占星術には季節のカテゴリーがある。
季節の変化は星、鳥を目安にする。
Q:脈診ですべてわかるのか?
A:脈診だけではわからないので、
問診、見診も必要。
脈診ではルン、ペーゲンの体質を持った人はわかりやすい。
Q:脈診はなぜ手首を使うのか?
A:いろいろな部分で脈は診ることはできるが、
足では心臓に遠すぎ、首だと近すぎる。
脈診は血の流れと共にルン(気)の流れも診る。
Q:心の病も脈診で診るか?
A:精神的な病は見ただけでわかる。
見診と問診が必要である。
Q:ムスタンに生活習慣病はあるか?
A:甘いものはよくとるので、糖尿病が多い。
またバターも多くとるので高血圧も多い。
ムスタンは高所なのでティパ、ペーゲンの病気が多い。
Q:アルツハイマーはあるか?
A:ムスタンでは少ない。
Q:平均寿命は?
A:統計値はわからないが、
粗食、水質、重労働、高所などのため、
平均寿命は短いだろう。
Q:どんな病気が多いか?
A:酒の飲みすぎによる肝臓障害、
バター茶を多く飲むため高血圧、
高所のため関節の病気が多い。
Q:温泉はあるか?
A:ツァランという所にあり、皮膚病の治療に使う。
ペーゲンの病気に有効。
Q:ガンはどのように考えているか?
A:チベット医学にはガンという概念はなく、
どの体質の病、
どの部位の病なのかということを重視する。
Q:ホスピスにあたるものはあるか?
A:それはない。
弱い人を救うことは徳を積むことになるので、
ホスピスのような施設は良いと思う。
しかし、チベット医学では、
死ぬことが分かっていても告知はしない。
告知で命が縮んでしまうこともある。
ちなみに
「アムチ(チベット医学の医師)になる方法は?」
という質問の答えは
「テキストの勉強と実施研修がある。
昔のアムチは製薬から診療まで全部やった。
今のアムチは分業し、
診療だけやることが多い」ということでした。
ちょっと長めに、僕の友人で、
チベット文化研究家の飯田泰也さんが
現地から送ってくれた、
チベット医学講演会のレポートを抜粋させてもらいましたが、
チベット医学がただの呪術、占術でないことが、
じっくりと分かったと思います。
また、機械部品を分解するような西洋医学の治療法について、
おかしいと思っている人が多いからこそ、
いまの日本人の若者たちからも、
興味津々の目で迎えられているのだと思います。
あなたはどう考えますか?
なお、アムチ・ギャッツオさんの次の来日予定がわかったら、
このコラムで、またお知らせしたいと思います。
|