第411回
大学病院は改革できるのか?
ドクハラを巡る土屋医師との対論の続きです。
関根 ドクハラ撲滅はもちろん、
医療改革がいろいろ叫ばれていますが、
どれもこれも、医師本位というか、
いまだしの感ありですね。
ガン病棟に入れば分かりますが、
とにかく、医師のマニュアルと病院のノルマが優先で、
大学病院のシステムを患者本位に変えることは無理ですよね。
土屋 無理ですね。
物理的な問題なのです。
大学病院そのものの情報公開がない、
そして、いまの医療保険制度のもとでは、
自由競争もない…
これをきちんとやる方向に向かえば、
大きい病院、有名な病院だけに集まる、
ということはなくなります。
情報公開すれば、一カ所に集中することを
解決することができるかもしれない。
関根 しかし、これまた情報公開は無理なのでしょう。
土屋 現状はね。
でも、やる気になれば早くできると思いますよ。
もうひとつ、医師免許制にも問題があります。
例えば医師免許の剥奪はないんです。
ペナルティが少ないのです。
医師法って刑法なのですけど、
ものすごく根本的なとこで間違わない限り、
医師法には引っかからない。
例えば医療ミスを犯した医者は免許剥奪とか、
情報公開しない医者は営業停止とか、
そうしたペナルティはない。
関根 国立病院だと告訴しても医者ではなく、
国が相手になってしまう。
国相手だと告訴は大変だから、
訴訟が少ないという話も聞いたことがあります。
土屋 医療ミスはつきものですから、
医師自身も個人で保険に入っています。
なぜかというとヨソの病院で手術することがあるから。
何かが起きた時、
その病院が守ってくれるとは限らないんです。
例えば患者さんには三つの方法があります。
一つは病院を訴える、
もう一つは医者個人を訴える。
三つめは医者と病院の両方を訴える。
関根 今の状態でいくと、
たとえ医療トラブルが起こったとしても
訴えるにはかなり手間がかかりますね。
土屋 かかります。それに裁判官が大変です。
今、司法免許を持つ医者は百人ちょっといます。
司法国家試験に合格する率は10%以下、
医師国家試験を通るのは90%といわれますから、
医療トラブルを巡る周辺システムにも
壁がいろいろあるわけです。
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