第15回
気がつけば己もガン!
いまでこそ、ノンキに構えていられますが、
ガン宣告を受けたときを思い出すと身の毛がよだちます。
まさか? 俺が? 悪性腫瘍の進行ガン?
誰しもが「頭の中が真っ白」になります。
とつぜんの夫のガン宣告。
妻の小さな目から、見る見る涙があふれ、
クックッと泣きじゃくるではないですか!
間違いなく、運命の一寸先が真っ暗闇となりました。
胸元の疼痛とともに、あのどんよりと曇った冬の一日が思い出されます。
僕も30年間にわたって、
週刊誌というやくざな世界をひた走ってきたために、
ストレスな生活、暴飲暴食のふしだらな日々がたたって、
胸元に6センチの悪性腫瘍が噴出。
58歳にして「気がつけば己もガン」と悄然としたわけです。
俺だけはガンになるはずがない…と高を括ってはいられません。
いまや誰でもがガンにかかる危険をたっぷりとはらんでいます。
食品汚染、環境破壊経済の蔓延は、医学の進歩を超えて、
人類の命を根こそぎ蝕んでいるといって言い過ぎではないでしょう。
吉永みち子さんというノンフィクション作家に「気がつけば騎手の女房」
という洒脱な名著があります。
大宅壮一ノンフィクション賞に輝いたことで有名です。
吉永さんには筆者が女性雑誌を創刊したときに
連載対談をお願いした思い出があります。
そのタイトルの伝を借りるわけではありませんが、
世はまさに「気がつけばあなたもガン」という
命の危機が蔓延しているといったらよいでしょう。
年間ガンで亡くなる人が30万人。
毎週、6000人がガンで亡くなっているのです。
別に、僕は商売でメール相談を始めたわけではなく、
イヤと言うほど主治医や病院からぞんざいに扱われましたので、
とにかく、せっかく拾った命一つです。
「医師が出来なくて患者が出来る養生法があるのだよ」
「生きる勇気を持って養生法を探し出せば運命が開けてくるのだよ」
という、健康自己管理のすすめを知らせたかったわけです。
たとえ、へそ曲がりと呆れられようと命を拾えば儲けものです。
「切る、焼く、叩く」という病院の対処治療法だけに身をゆだねていると、
助かる命も落としかねないですよ…と知らせたかったわけです。
医療不信の横行する世の中では
患者はよりシタタカであらねば命がもちません。
一人一人の賢い患者学が欠かせない時代です。
患者や家族たちとの心温まるメール交信は、
かえって、僕自身にも生きる勇気を分けてくれたことにもなりました。
人間ひとりぼっちでは生きていけませんね。
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