中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4117回
マンションの家主は難しいですね

不動産と言っただけで、
マンションを頭に浮べる人が多いんじゃないかと思います。
それほどマンションが普及していましたが、
日本でマンションが建ちはじめてからまだ50年もたっていません。

はじめて東京に建ったマンションは原宿と渋谷で、
私は参考のためにすぐ見に行きましたし、
日本で最初にマンションを建てた人とも懇意になりました。
今、考えて見ると嘘のような話ですが
渋谷の東急本社の前に建ったマンションは一坪の値段が30万円で、
「ウアー、高い」とびっくりしたものです。
それが一坪100万、500万になって
遂に億ションまで出現したのですから、
気がついて見たら、東京はもとよりのこと、
地方都市でもマンションに住むのが当り前になってしまいました。

ご存知のように住宅が郊外へ郊外へと拡がって、
出勤するのに1時間も2時間もかかるようになると、
庭はないけれど、半時間以内に出勤できるところは
「時間の節約」になります。
ですから土地付きでない住宅には財産価値がないという
当時の常識を破って
「マンションを買いなさい」と私はすすめました。
それも当時の流行歌で唄われていた
「銀座、赤坂、六本木」「渋谷、新宿、池袋」のド真ん中か、
それに近いことろを買うようにすすめたのです。

自分は庭つきの家に住んでいましたが、
最初に買ったマンションは渋谷からNHKまで上がる通りの、
それも西武百貨店が建ったすぐお隣りで、
以来、赤坂・六本木・新宿まで手を拡げて行きました。
そして、それなりに家賃をいただきましたが、
それぞれに事情があって一軒また一軒と手離し、
いまでは一軒も手元に残っていません。

どうしてかと言うと、
マンションを借りている人は
誰でも自分でマンションを買うことが頭の中にあり、
一人また一人と自分のマンションに移ってしまうからです。
人に貸すマンションは家賃は下がるし、
家は古くなるし、空家になることも多くなって
財産として持つ価値が下がってしまったのです。


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2011年6月18日(土)

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