中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第4115回
神宮前で信号が赤になったばかりに

「所得を発生させずして資産をつくる法」
というアイデアが私の頭の中に宿るようになってから、
私はそれまでより
ずっと不動産に関心を持つようになっていました。

自分の家のほかに、
株で儲けたお金で渋谷の東急本社の隣りに
30坪ほどの小さな土地を買い、
そこに地下1階地上4階の小っぽけなビルを建て
「マネービル」という名前をつけて、
その3階でコンサルタントのオフィスをひらいていましたが、
戦後初の大不況が襲うと私は自信を失ってオフィスをしめてしまい、
会計の女の子と運転手だけ残して部屋は人に貸し、
石川台の自宅に引越し、歌謡曲づくりをはじめたことは
既にお話しをした通りです。

しかし、1年がすぎて景気が少し回復をはじめると、
私が日経で税金をテーマにした連載をはじめ、
自分がいくらか元気を取り戻したこともありますが、
私自身株の話は辞めて
不動産の勉強をしようかと思いはじめていました。

そうした或る日、家内に車を運転させ、
私が助手席に座って明治通りを神宮前の交差点まで来ると、
交通信号が赤になってストップしてしまいました。
ふと窓の外を見ると、
ボロな木造の2階家に「売家」と立札が立っています。
「あれ、いい場所じゃない?」と私が家内に言うと、
「早く早く立札の電話番号を書きとめなさいよ」
と催促されてあわててメモをとりました。

家に帰って電話番号のところへ電話をすると、
間もなく家の持主が夫婦に娘まで連れて
3人で私の家まで説明に来ました。
きくと、人の保証をして家を売らないと
競売に付されるところまで来てしまったという話でした。
いくらに売りたいのですかときいたら「1800万円」と言います。
私が「1500万円でどうですか。1500万円なら即金でお支払いします」
と言ってそのまま私だけが書斎に引き揚げました。
しばらくたつと話相手をしていた家内が書斎まで上がって来て、
「ね、ね、可哀そうだから、もう100万円払ってあげたら?
親子3人で泣いているんですよ」
と言うじゃありませんか。


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2011年6月16日(木)

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