| 第4056回次のアジアは日本と中国の組合わせ次第
 私は17年前に出版した「アジアの勃興」という本の中で、「今に日本は円高で国内で生産してもソロバンに合わなくなって、
 輸出産業の3分の1が海外に移動する」
 と予言しています。
 「たとえば、アメリカに経済力で劣らない新しい大中華経済圏が誕生する。
 アメリカから目の敵にされ、アメリカ市場から締め出された日本が、
 その必要に迫られて中国市場に目を向ける。
 そこはアメリカのように
 既にできあがった消費市場ではないけれども、
 豊富で低廉な労働力を抱えた有望な生産基地だから、
 日本人の資金と技術を投ずれば、
 立派な生産基地になると同時に、
 立派な消費市場に育つことが目に見えている。
 そうした経済の発展に手を貸すことが
 日本の資本に新しい投資の手がかりをあたえ、
 かつ日本の設備産業に商売をもたらすとあれば、
 国内的に行き詰まった日本の企業が
 指をくわえて何もしないという道理があるだろうか」
 そう述べて、一番最後に「そうした動きを
 国内の空洞化という言葉で表現することもできるけれども、
 日本人の活躍舞台が
 アジア的スケールに拡がる時期を迎えたと言った方が正しいだろう。
 それにしても、僅か半世紀で地球は何と狭くなったことか」
 と結んであります。
 「太平洋は地中海」と題して平成4年(1992年)1月号から
 平成6年6月号のPHPの「THE21」誌に連載した論文です。
 かつて地中海をめぐってローマやカルタゴに起ったことが20世紀の終わりには太平洋をめぐって起り、
 やがてそれがアメリカを中心とした世界から
 アジアの時代に移ることを予言したものです。
 それが20年を出でずして現実の物となりましたが、
 これで「日本の時代」の終わりになるのか、
 それとも日本と中国が力を合わせた「アジアの時代」に発展するかは
 これからの日本と中国の組み合わせ方次第ということになります。
 いま漸くその入口まで辿りついたところと見てよいでしょう。
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