第4057回
震災は大きな教訓でもあります
今回のような大震災にあって見ると、
どれだけ損害を受けたかということもありますが、
ふだん批判の対象になっている日本にどれだけの実力があったかを
失って見てはじめて思い知らされます。
たとえば、自動車や携帯電話だって、日本のほんの一角で
津波と原子力発電の故障に見舞われただけで、
完成品の生産がストップしてしまっています。
私と直接かかわりのある分野でも、
日本から積み出すためにメーカーが港まで運んでいた
240台のパワー・ショベルが大波にあって
全部破棄処分にされてしまいました。
大型機のパーツのホンの一部をつくっている工場が
水難にあったために、
ほかの部分が全部揃っていても
向う1年完成品の生産が覚束ない破目に追い込まれてしまうのです。
また円高になったり、円安に動いたりすると、1円違っただけで、
うちの小さな会社でも1年に2500万の差が生じてしまいます。
1ドル95円だったドルが円高で85円になっただけで
貰い分が2億5千万円も吹っとんでしまうのです。
政治家や学者の先生や銀行のトップの人たちは
直接、自分たちの懐具合と関係がないので
大して気にしていないようですが、
日本の産業界はその度にとても大きな影響を受けるのです。
「災害に売りなし」と私は言いましたが、
これから工場を建て直したり、
下請けをどこに持って行くかについては、
そうした万一の場合も考慮に入れて
戦略を練りなおす必要があります。
これから国境が少しずつはずされて行く時代になるのですから、
パーツをつくる下請会社に限らず、
重要な心臓部の生産だって危険分散を考慮に入れる必要があります。
危険分散をしておれば、
減産になった分を分散した生産基地の増産によって
カバーできるのですから、
日本の企業にとっては大きな教訓になったと言ってよいでしょう。
被害を受けた人たちは落着いたら、
大半がもとの古巣に戻るでしょうが、
産業界はそういうわけには行かないのです。 |