中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3624回
失業の日本は長期化する覚悟が必要

日本の労働組合が
賃上げ斗争をやらなくなってから久しいのですが、
気がついて見たら賃上げどころか、
高賃金の社員の首切りに前後を忘れて、
生産事業でさえも派遣社員で
労働力の足りない分は埋め合わせて
身すぎ世すぎをやるようになったのです。

これではバブルの整理が何とかついて、
経済界が活気を取り戻したとしても、労賃が減った上に、
金利がタダに近いところまで下落して
金融資本からの収入がなくなってしまったのですから、
日本経済が高度成長時代の勢いを取り戻せるわけがありません。

もう20年近くも、日本企業の生産基地が
労賃の安い海外に引越して
何とか採算がとれるようになったところで、
世界的な金融不安の津波がドッと押し寄せてきたので、
輸出が打撃を受けた分だけ、
日本の稼ぎが悪くなって消費が悪化しているのです。
ですから中国や他のアジア地域への輸出の恢復が
対米輸出の減少分をカバーできない限り、
日本経済の恢復は先延ばしになることは避けられないでしょう。
ヨーロッパの資本市場は
ドバイのピンチの影響をまともに受けているし、
アメリカの実体経済の恢復は
かつての日本経済がバブルの崩壊で
容易に立ち直らなかったように、
そう簡単には立ち直らないことが次第に明確になるので、
アメリカとつきあっている分は恢復が遅れることは、
やがていやでも認めざるを得なくなります。

すると、日本の失業率がふえることはあっても
俄かに恢復することは全く考えられず、
派遣社員の解雇は今後も更に続き、
失業は日本の最も強烈な
社会問題になる覚悟をしなければなりません。
それでも日本には過去の蓄積があり、
所得水準も高いので、
アフリカで起るようなことにはなりませんが、
かつて昭和の初め頃に経験したような
「大学は出たけれど」
「詩をつくるより田をつくれ」に似た社会現象が
一世を風靡することは避けられそうもありません。
難しい世の中を生きる覚悟が必要になったのです。


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2010年2月10日(水)

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