中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3623回
他人より先ず自分の失業問題の解決から

一昨年のアメリカの金融不安が
大津波になって日本にも押し寄せてくると、
トヨタをはじめ日本を代表する輸出産業は
軒並み大赤字に見舞われるようになりました。
操短が発表されると同時にどこの会社も
派遣社員の首切りに着手しました。
そういう契約になっているのですから、
会社にして見れば契約違反をしたわけではありません。
正社員は残して派遣社員を解雇するのは当然の成り行きです。

しかし、派遣社員にして見れば、
忽ち収入がなくなるし、
工場の宿舎から通っている場合は
忽ち住むところもなくなってしまいます。
そういう人が何万人どころか、何十万人をこえるようになると、
国全体を揺さぶるような大きな社会問題になってしまいます。
とりわけ政府が先頭に立って生産事業が
派遣社員を採用するのを禁ずるようになると、
通路や地下鉄の階段で雑魚寝をする人が
珍しくなくなってしまいます。

こうした正社員から派遣社員への切り替えも、もとを言えば、
バブルがはじけてコスト高に悩むようになった
日本の代表的なメーカーの
やむにやまれぬコスト・ダウンの知恵から生まれたものです。
その代表格は何と言ってもトヨタ自動車でしょう。
トヨタのカンバン方式とは
欲しい時に欲しい物を手に入れて在庫を持たないことだから、
それを人間に応用すれば、
「労働力のカンバン方式」ということになります。

当然、一番きびしく労働力に注文をつけたのは
トヨタということになって、
かつてトヨタが2兆円からの利益をあげたのも
もとを言えば労働力の在庫なしに負うところが
如何に大きいかを物語るものです。
それでも金融津波の襲撃は防ぎきれず、
失業者が巷に溢れるようになったのですから、
失業問題の解決どころか、失業者を国内に残して
企業の方がもっと賃金の安い外国に
大移動することが考えられます。
失業問題は簡単に解決するどころか、
長期にわたって政治的問題化するので、
自分はどうするかということからスタートする必要があります。


←前回記事へ

2010年2月9日(火)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ