中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3531回
人件費の節約が日本企業の生きる道

日本企業の長所と言われた終身雇用制と年功序列給は一頃、
日本社会の長所として讃えられた時代がありましたが、
会社にそうした無駄金を払う余裕があるうちは
それでいいかも知れませんが、
そのうちにそんなことは言っておられない時代が来るんではないかと
私は危んでいました。

バブルがはじけて、
どこの会社も必死になって冗費の削減をはじめると、
人件費の無駄が目につくようになりました。
機械化がすすみ、
現場の作業が初心者でもすぐ覚えられるようになると、
年の功が物を言わなくなってしまいました。
経験のある人は1つの職場に1人おれば間に合うようになり、
同じ仕事をやるのに倍も3倍も月給を払うのは
誰から見ても無駄ということになってしまったのです。

そこでバブルがはじけて経費の節約が企業の至上命令になると、
年寄りの肩叩きがはじまり、
社内失業は本物の失業に変わってしまいました。
人件費の思い切ったカット・ダウンは
会社が生き残る唯一の生命線ですから、
気がついて見たら、
どこの会社も正社員を切り詰めるだけ切り詰めて、
生産工場や現場の作業員は
派遣社員やアルバイトで間に合わせるようになってしまいました。

プロの作業を必要とする製造現場でさえも、
会社を定年退職した工場長や現場主任が人材派遣会社に移って
班を組んで派遣されて来るのですから、
作業をすすめることに何の支障はありません。
それでいて昇給もなければ、退職金の心配もしなくてすむし、
しかもストで作業がストップする心配もないのですから、
気がついて見たら本社の正社員より
臨時雇いの数が多くなっていたとしても
何の不思議もないのです。
そういう対応のできなかった企業の方が
生存競争に破れて産業界から姿を消すことになってしまうのです。
ところが、そこへ金融不安による世界的な不況が訪れると、
今度は派遣社員の首を切るよりほかなくなってしまいます。
企業はそのことで頭を抱えているのに、
その企業に対して派遣社員の首を切るか切らないかについて
政府が干渉すると、弱り目に祟り目ということが起るのです。


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2009年11月9日(月)

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