中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3530回
若者が平気で会社を辞める時代です

老齢化が進めば年金が払えなくなると
私は40何年も前に言いましたが、
年金が払えなくなる前に、
退職金どころか、月給が払えなくなることが
産業界を直撃しております。
かつて高度成長で日本の経済発展が
世界中から羨望まじりに賞讃された頃、
日本の終身雇用制と年功序列給は
日本人の雇用先に対する忠誠心を保つ制度として
日本びいきの外国人経営学者からもちやほやされました。

確かにそういう一面もありましたが、
一ぺん就職したら死ぬまで会社に
「だっこにおんぶ」をきめこまれては会社の方もたまらないし、
それだけのお金を会社が払えなくなったらどうする積りだろうかと
私も首をかしげました。
また職を求める側にとっても、
たまたま本人が学校を卒業して職を求める年に、
偶然に就職した先が本人の希望する職場でなかったり、
どうしても手に合わない職場であった時、
日本のように敵愾心をもって虐待されたのでは
あまりにも人間性を無視した環境ではないかと考えて
「サラリーマン出門」(入門ではなくて会社をやめる方法)とか、
「途中下車でも生きられる」といった本を書いて、
就職先を間違えたことに気づいた若者たちに
転職や独立をすすめました。
私が転職をすすめる本になぜ
「途中下車」というタイトルをつけたかというと、
その頃の電車の切符をひっくりかえすと裏に
「途中下車前途無効」と書いてあったからです。
会社をやめても生きて行けることを強調したかったのです。

しかし、この手の本はよく売れる私の著書の中では
あまり足の早い方ではありませんでした。
大抵のサラリーマンが転職に関心がなかったこともあるし、
たまに関心のある人でもそんなタイトルの本を
会社に持って行くことができなかったからではないかと思います。

それが、今では違います。
時世が変わったのです。
一流の会社に就職した若者でも平気で辞めます。
会社が辞めてもらいたい人は会社にしがみついていて、
会社にいてもらいたい人は何の未練もなく平気で辞表を書くのです。


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2009年11月8日(日)

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