中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3484回
株の知識がなくても立派に生きていけます

お金儲けの仕事は自分で事業をおこしてお金をふやすか、
持っているお金を働かせてふやすか、
それ以外に方法はありません。
自分であきないをして資産をつくる人は
この2つをかねてやることができますが、
毎月の稼ぎの中から節約をしてふやす人は
サラリーマンの副業みたいなものですから、
うまく行ってもタカは知れています。
しかし、同じサラリーマンでも利殖に関心のある人と
そうでない人とでは、
長い間に大きな差がついてしまいます。

ところがお金に無頓着な人が
定年が近づいてから俄かに老後のことが心配になり、
突然、利殖に目醒めたりします。
そういう人がやがてもらう本人にとってはかなりまとまったお金を
どうやって運用したらいいのか、
あれこれ気にしてとんでもないことを私に質問したりします。
私はお金を扱いなれていない人は、
退職金をもらっても変な気を起さずに
僅かな利息に甘んじた方が安全だと思います。
退職金をもらえる頃になると、
突然、証券会社の人が現われたり、
わけのわからない投資の勧誘に来る人が尋ねて来たりしますが、
一切、耳を傾けないことです。
そういう人たちはあなたのお金を狙っているのであって、
あなたのお金をふやしてくれるために
現われたわけではないからです。

もうずいぶん前のことですが、
私の小学校の時の先生がわざわざ東京までやってきて、
「近く退職金をもらうことになったけれど、どうしたらいいかね」
と私に相談したことがあります。
私は「株など買わずに定期にでもしておいたらいかがですか」
と答えましたが、しばらくしてまた現われた先生が、
「君が株を買っちゃいけないというから、投資信託にしたよ」
と言ったので、
「先生、投資信託も株ですよ」と答えたら、
とびあがらんばかりに驚いていました。
経済の知識のない人はこんなことすらわからないのです。
ですからうっかりすると、思いもかけない大怪我をしかねません。
退職をしても退職前と同じつつましい生活をする気なら、
利殖の知識などなくても立派に老後を送ることができるのです。


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2009年9月23日(水)

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