中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3356回
はじめて経験する工業的豊作貧乏

私は8年あまり前にこのコラムで
「工業的豊作貧乏」という言葉を使ったことがあります。
豊作貧乏とは本来、農作物に対して使う言葉で、
天気に恵まれて市場が必要とする量を超えて
農作物ができすぎると、農作物の値段が大暴落をして
農民が苦しめられることを意味します。
お米だってそういう目にあわされましたが、
昨今は米作を統制するようになったので、
豊作貧乏はキャベツや玉葱などの野菜に
限られるようになりました。
できすぎた野菜を市場に出すと、
タダのような値段まで買い叩かれるので、
パワー・ショベルで押し潰したりします。
「もう来年はキャベツは植えないぞ」と皆が大根に切り変えると、
次の年は大根で同じことが起ってしまうのです。

ですが、農作物は長持ちしない上に、
悪天候に見舞われれば、
たちまち不作凶作におち入りますから、
豊作貧乏はやがて不作貧乏に変わってしまいます。
農民がいい思いをするのは
3年も続かないのが農業社会ときまっているのです。

それに比べると、工業社会で
電気冷蔵庫なら電気冷蔵庫、自動車なら自動車、
液晶カメラなら液晶カメラの分野でブームが起ると、
生命の長い商品ほどメーカーが集中して次から次へと、
いくらでも投資を続けます。
そのために増産が続き、過剰生産におちいって値崩れをし、
在庫の山になるだけでなく、
同業者のどちらかが倒産に追い込まれるまで豊作貧乏が続きます。
しかもそれがいつ起って、
どこでとまるかは実際に起って見ないとわからないのです。

いままさに工業的豊作貧乏が
戦いたけなわと言ってよいのではないでしょうか。
技術的に劣っているとか、
金銭的に恵まれていないというだけで
倒産に追い込まれるとは限らないのです。
自動車業界を見てもビッグ・スリーだけが
ピンチに追い込まれているわけではありません。
トヨタでさえ赤字が8500億円と発表されています。
生産力のついた分だけその反動も大きいのです。


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2009年5月18日(月)

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