中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3204回
観光事業もホテルも私はお客の側に

航空会社の株は駄目でも、観光事業は成長産業なのだから、
観光業に属する旅行社やホテルはどうですかとよくきかれます。
日本でもまだ海外旅行がブームになりたての頃は、
観光事業の株もかなり高くまで買われたし、
不動産の値段がずっと堅調を続けたので、
ホテル株は長い間、高値を維持していました。
帝国ホテルや第一ホテルの株は
資産株の中でも優良株として取り扱われたものです。

しかし、経済成長が終って、バブルがはじけて見ると、
観光客がふえたり、ホテルの利用者がふえても、
両者とも利益はふえるどころか、逆に減る方向に向い、
ホテルの不動産は株買占めの対象になっただけでなく、
なかには経営不振におちいって倒産してしまったホテルも
一つや二つではありません。
どうしてかなと調べて見ると、
観光事業はマージンが少い上に競争が激しいので、
添乗員や窓口の給料を払ってしまうと、
社長の給料の出所もないほど
逼迫した金ぐりにおちいってしまうのです。
ホテルや航空会社や鉄道から僅かなリベートをもらっただけでは
社員のボーナスがきちんと払えただけでも恩の字で、
仕事がふえても利益は逆に減って
株価を押し上げることにはならないのです。

ホテルに至っては
ちゃんとした建物を建てるだけでも莫大な資金が必要だし、
ロケーションを間違えただけでも大へんな負担になるし、
従業員を訓練して採算線にのせるだけでも
大へんな努力を必要とします。
死ぬ思いをしてお客を集め、
やっと70%くらいの利用率まで漕ぎつけると、
すぐお隣りにもっと立派でもっと設備の整った
新しいホテルができてしまうという宿命に曝されてしまうのです。

ですから私は観光事業にも手を出さないし、
その昔、ビジネスホテルの1軒目をつくったこともありますが、
ホテルをやりませんかと誘われると思わず尻込みしてしまいます。
ですからホテルに建物を賃貸しする仕事はやっていますが、
ホテル株は持たずに専らお客の側にまわっています。


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2008年12月17日(水)

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