第3197回
邱永漢投信をやらなかったわけ
「他人のお金を30億円集めて株に投資し、
それが倍になったら、儲けの1割をあげます」
と言われたら、
皆さんならどうしますか。
「いい話じゃないか、一丁やって見るか」
と頷く人があるかも知れません。
自分のお金は一文も出さないですむことだし、
損しても自分が損するわけじゃないのだから。
でもそう考える人のところへ
30億円を預けてくれる人はいないのです。
私なら先ずそんな重い荷物はとても担ぎきれないと考えます。
株価が倍になることはよくあることだし、
そういう目にあったことは私だって何回となくあります。
でもその逆のこともありますし、
どちらが多いかというと下がる可能性の方がずっと多いのです。
株をやっている大半の人は株価の動きを読みきれない人たちで、
それでも大損をしないですんでいるのは、
ダウ平均が上昇する過程にあって、
長い目で見ると、
産業界全体のパイが大きくなっていく過程にあったからです。
ですから結果として30億円が
60億円になることはあり得ないことではありませんが、
時期によってはその逆のこともあり得るし、
いくら他人のお金だからと言って
そう安易に考えるわけには行きません。
目標を達成できない可能性もあるし、
死ぬ思いをして30億円稼いで
3億円もらうのでは割りに合わないと私なら考えます。
「そんな死ぬ思いをして3億円報酬としてもらうなら、
私は自分で3億円のお金をつくって倍にすることを考えます。
人のお金をうまく動かして死ぬ思いをするくらいなら、
自分が損をする道を選びます」
そう考えて投信を設定することも拒否しましたし、
株式投資のプロになる道も選びませんでした。
それでも株価が10分の1に下がれば私の株式財産も
同じように目減りします。
でも私はあわてて株の投げ売りをしたりすることはありません。
底値のところで
次のステップで成長する株に乗りかえることはありますが、
いよいよその時期が近づいたということです。
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