中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3169回
たかがリンゴ・ジュース、されど

北京から煙台にとんで最先に訪問したのは安徳利果汁、
日本風に言えばアンドレ・ジュースの会社でした。
どうして私がジュースの会社に興味を持ったかというと、
ジュースに対する中国の需要が急速に伸びており、
中国で1位の匯源果汁にコカコーラが目をつけて
買収に踏み切ったからです。
業界で反対運動が起りましたが、
迅速に行動したコカコーラは買収に成功した模様です。

その同業者で、規模はまだ小さいのですが、
昨年だけでも利益が206%もふえ、
ことしに入って上半期も288%も増益という
急速な成長を遂げているリンゴ・ジュースの専業メーカーが
はたしてどういうプログラムで成長しているのか
興味を持ったのです。
株価の高値は98セントですが、
私が見学の申し入れをした時が65セント、
そして、私たちが会社に乗りこんだ時が
何と35セントまで売り込まれていました。

案内をして下さった総裁の王安さんに
「ずいぶん株が下げましたね。
アメリカ人の持株が売られているのですか」
ときいたら、
「そうかも知れませんね」
とさして神経をとがらす風でもありませんでしたので、
私は却って好感を持ちました。
向うも最初はさして重要な見学者と思っていなかったようでしたが、
話をしているうちにわかってきたと見えて、
最初は案内する積りでなかったリンゴの皮を加工してつくる
ペクチンの新工場まで案内してくれて、
説明会をもう一度、新しい会議室でやりなおし、
「年にどのくらいのスピードで大きくする積りですか」
ときいたら、
「どんなに少くても50%でしょうね」
と事もなげに答えました。

帰ってから更に中国株の大暴落が続き、
22.5セントという新安値をつけています。
そんな安値は恐らく二度とつかないと思いますが、
食品に興味のある人は、
亨泰と2つ並べて研究に値いする銘柄ではないでしょうか。
見学して以来、
私は株価の動きに注目する銘柄の一つになっています。
たかがリンゴ・ジュースのメーカーですけど。


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2008年11月12日(水)

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