中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第3014回
日本に育っただけで役に立つのです

日本人は海外に出るととても役に立つ人間になります。
でも日本人はそのことを知りません。
育ったのが日本で、教育も日本で受けたけれども、
社会経験も積んでいるわけでもなし、手に職を持ってもおりません。
専門知識に至っては、一流企業の現場で働いた人はともかく、
学校出たてやサラリーマン1年生では
身についているわけがありません。

それでも新興国や発展途上国に行くと、
どうして珍重されるかというと、
日本人気質が身についているからです。
血をひいているからではありません。
そういう環境に育つと無意識のうちに
その人の血となり肉となってしまう社会環境に育っているからです。
たとえば日本の残留孤児は日本人気質は持っていません。
反対に韓国人や台湾人の子弟でも
日本育ちには日本人気質が備わっています。

ではどこが違うかというと、
日本に育つと日本的な立居振舞いが常識として身につきます。
言われたことはきちんとやる責任感とか、
同じことをやっても完璧主義にこだわるとか、
対人関係ではサービス精神を貫くとか、
日本人としてはごく当り前のことが
大人になっていくプロセスで自然に身についてしまっているので、
それが外国で社会生活をやって行く上で
非常に役に立つのです。

グループとしてなら、
日本の企業でその国が必要としている業種はとても役に立ちます。
資本も技術も人間も歓迎されます。
しかし、個人も日本育ちは働き手としてきわ立った存在なのです。
たとえばデパートやスーパーのような流通産業でも、
またレストランやコーヒー・ショップのようなサービス業でも、
日本人はよく気がつくし、改善する努力を惜しまないので、
お客から喜ばれる演出ができます。
現に私は中華料理屋のマネージメントを
わざわざ日本人にやらせていますが、
これが意外な好評を博しています。
日本人の出る幕は日本人自身が考えるよりずっと多いのです。


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2008年6月10日(火)

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