中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2570回
私はニュース解説者ではございません

私の書いている「もしもしQさん」の原稿には
いつ書いたという日付はありません。
もう50年も原稿を書いていて、
多い時は月に16本も連載を抱えていましたが、
1回も原稿が遅れたということがございません。
そのためにマドリッドやモスクワまで
原稿用紙を抱えて行ったこともあります。

私がホーム・ページに載せている原稿が
原稿用紙にペンで書いてあるのを見て、
インターネットもうまく使いこなせていない人と
せせら笑っている人がいましたが、
私は字を書くことになれているので、
手で打つより早く仕事がすすむのです。
それから自分で書かないと、
字の書き方を忘れる心配もあるのです。
漢字はアルファベットと違って、字の出来上がり方に由来があって、
それを味わいながら書くことに意義と喜びを感じています。
たとえば男とは、田んぼで力を出しているから男であって、
婦とは帚を持って掃除をしている人だから婦なのです。
いまは田んぼで力を出さない男もあるし、
掃除をする帚で亭主を叩く女性もいますが、
そういう字を指先で叩き出すより、
私の場合は筆で書く方が味わいがあると思っているのです。

でもそうすることによって約束をたがえずに、
ちゃんと間に合わせることは
雑誌社や新聞社に迷惑をかけないことだったし、
いまは皆さんの期待にそむかないことになります。
その代わりニュース性がありませんので、
たとえば株が大暴落した時にどうしたらいいかといった
急場の用には役に立ちません。
どうしてかというと私はニュース解説者でないし、
お金の救急病院をひらいているわけでもありません。
私は時の流れがどういう方向に向っているかに興味があり、
時にはそういう流れの行く先について
予言者の役割をはたすこともありますが、
基本的には流れの中に呑み込まれないで、
うまく筏をこぐにはどうすればいいかを自分にも言いきかせ、
信じてくれる人にも解説してさしあげているだけのことです。
あわてて急流の中にとびこむ人まで救える術は
とても持ちあわせていません。


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2007年3月24日(土)

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