中国株、海外起業、海外投資、グルメ、ファッション、邱永漢の読めば読むほどトクするコラム

第2363回
籠の中の九官鳥を連想してしまいました

モスクワに行っても、サンクトペテルブルグに行っても、
市内を走る道の立派なことは文句のつけようがありません。
自動車はソ連製の見すぼらしい車が多いけれど
暴走族も見当たりませんので、秩序整然としています。
でも一番驚くのは、どこに行っても新しく建築中の建物が見られず、
ほとんどすべての人たちが
減価償却の終わったあとの家に居住していることです。
つまりロシア人はピョートル大帝の遺産の上にあぐらをかいて、
悪びれることなく、ちゃんと生きているということです。

そのへんが、7%をこえる経済成長率を維持をしている
と言われながら、中国と大きく異なっているところです。
中国では北京や上海だけでなく、
どこの田舎に行っても
新しい舗装道路をつくるために道は掘りくりかえされているし、
高層建築やマンションの大群が建設中です。
全国に開発区と呼ばれる工業団地が五百ヶ所もあり、
それぞれの地方の長官が
投資家を誘致するためにとびまわっています。
それに比べると、
ロシアでは大都会の郊外でも建築中のマンションは見当たらず、
町中のデパートも二階建の古い建物が多く、
スペースは巨大ですが、なかに並ぶ商品は乏しく、
私たちが思わず足を止めて、
お土産に買って帰ろうかと思う珍しいものは先ずありません。
ロシアの平均賃金は200ドルで、
モスクワはその4倍はあるとききましたが、
スーパーで売っている食品も日本に比べても割高なものが多いので、
決して豊かな生活をしているとは言えません。

それでもロシア人は自分の考え方をフランクに言う人は先ずなく、
ガイドさんだってロシアの専制的な皇帝たちと
レーニンやチャイコフスキーをごっちゃに並べて紹介します。
唯一の自慢は
ピョートル大帝の頃から受け継がれてきた立派な建物ですが、
習った通りに同じ説明をくりかえすだけなので、
私は思わず籠の中の九官鳥を連想してしまいました。
それにしてもロシアの女性は美人が多いですね。


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2006年8月29日(火)

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