第2146回
もうすぐ「おじんのおしゃれブーム」がはじまる
いまは着る物などありあまっています。
どこの家もタンスの中は
ふだん着ない衣料でギュウギュウ詰めになっていて、
スーパーのような安いだけで
変わり映えのしない
日常衣料を売っている店は
営業不振でフーフー言っています。
こういう時代にガチャマン時代のような
繊維ブームが来ることなど、
もちろん、期待できません。
でももし新しい流行が起って、
いままでタンスの中を一杯に埋めていた衣料品を
すべてゴミにしてしまうようなことが起ったら、
衣の部門に大きな変化が起ります。
成熟社会というのは
何でも物が余るようになったので着る物も、
古着で間に合ってしまうから、
新しい物は要らないということではありません。
むしろお金の余裕はあるし、
新しい物を創造する能力も持っているのですから、
いままでになかったような高級品や
珍しい商品があれば
新しい消費意欲を刺戟します。
そうでなければ経済成長のとまった日本に
あれだけ世界中の一流ブランド・メーカーが
軒を並べるようになるわけがありません。
成熟社会には成熟社会なりの新しい変化があり、
新しい進歩もあるのです。
そういった意味で、
まず食生活に変化が起りますが、
その次は病院の改善、
そして健康産業と言った筋書だけでなく、
衣食住の中の衣にも
新しい風が吹き込む可能性があります。
おじんのおしゃれの雑誌が
大へんな勢いで伸びはじめたのを見ると、
お勤めに行く時に着る服と
ゴルフに行く時に着る服くらいしか持っていない
世の中年男たちに
「おしゃれとは何か」を教える新風が
捲き起ろうとしていることがわかります。
私は気の早い方ですから、
朝起きて洋服ダンスを開けてから
今日着る服を選ぶのではなくて、
明日はどんなコンビネーションの服の着方をするか、
前の晩、寝る前に考えるようになりました。
私のようなもうかなりの年寄りでも、
生活のスタイルを変えるのですから、
私のあとに続いて年寄りになる人たちが
そのあとに続くことは
大いにあり得ることではないでしょうか。
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