第2118回
時々、後進国に骨休みに行ってはいかが
後進国まわりをすると、
改めて日本はいつの間にか
先進国になってしまったなあ
という思いをあらたにします。
先進国って何だということになりますが、
後進国でいつも起る不自由なことが
起らなくなることです。
先ず停電しなくなります。
それから水を運ばなくてもよくなります。
終戦後の台湾に
国民政府に連れられて入ってきた大陸の人が
壁にとりつけられた蛇口から
水道水が出てくるのを見て、
蛇口だけを買ってきて
壁にとりつけたという笑話がありましたが、
昨今の中国では
さすがにそういう人は見当らなくなりました。
ミャンマーに行くと、
ヤンゴンでは見当りませんが、
バガンに行くと
水運びがいまも女性たちの家事の一つになっています。
町で一番のホテルに泊りましたが、
毎日何回も停電して
お風呂に入れなかった日もありました。
日本人は停電とも水くみとも無縁になりましたが、
50年前は東京でもしょっちゅうあったことです。
電気も水道も完備した頃になると、
そのほかの生活用品や交通手段も
しぜんに完備するようになるし、
議会制度とか教育制度とか、
人権の保護もそれぞれの社会の常識になります。
日本も明治までさかのぼれば
文明開化の道を歩むようになってから
150年くらいになってしまいましたが、
敗戦から約半世紀で世界のトップを行く
先進国の模範生になりました。
ではそれで日本人は物質的にも満足し、
精神的にもしあわせになったかというと、
客観的にはその通りであるのに、
自意識の上では必らずしもそうではありません。
豊かになった分だけ嫉妬深くなって
足の引っ張り合いをするし、
生産力があるようになった分だけ
競争が激しくなって心の安まるいとまもありません。
そういう人たちはどうすればよいかというと、
時々、仕事と仕事場を離れて
停電するところと水道のないところに行って
生活をして見ることです。
不便があなたにしあわせを取り戻すことを
教えてくれるからです。
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