第1942回
一番ハヤっているのはレストランです
いま中国で一番ハヤっている商売は何かというと、
それはレストランです。
「へーえ、本当ですか?」と
誰でもききかえしたくなります。
昔々からある商売が
どうして改めてハヤっているかと言うと、
中国がかつてないほど豊かになったからです。
ふところ具合がよくなると、
人間は眞っ先に食べることに
お金を使うようになるのです。
上海料理は広東料理と並ぶ
中国を代表する料理です。
上海料理がトップに踊り出たのは
戦前の上海が国際都市として栄え、
そこに住む人たちが突出して
金持ちになったからです。
それが毛沢東の時代になると、
外国との往来も閉ざされ、
収入も低目に抑えられて
外食をするだけの余裕がなくなってしまいました。
17、8年前、私がはじめて上海に乗り込んだ時、
南京東西路だってロクなレストランがなく、
私が上海蟹を食べたいと言ったら、
唯一、上海蟹を出すのは国際飯店です
と言って案内されました。
出て来たのを見ると、
栄養不良のザリ蟹のような小っぽけな上海蟹で、
それも外国人だからと
特別に出されたご馳走でした。
見事な上海蟹は
外貨稼ぎのために香港に輸出され、
両者比べると天と地ほどの差がありました。
それが僅かの間に旧に復し、
いまの上海料理は香港の広東料理のレベルを
追い越さんばかりになり、
どこのレストランも
上海の人たちで行列をするようになっています。
この傾向は経済成長の先端を切る
上海だけに見られる光景ではありません。
成都に行っても、昆明に行っても、
ハヤっているレストランは
中国人の人たちで一杯になっています。
それも少し前までは
レストランに入ったこともなかったような人によって
埋められているのです。
中国が危機的なピンチの状態にあるのか、
それとも天下泰平を祀っているのかは
レストランの繁盛ぶりを見たらわかります。
日本人が中国に行って
レストラン商売をやるチャンスもあるのです。
これだけお客がたくさん入っているのですから。
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