第1829回
投資と投機はこんなに違います
「お知恵拝借」のページを担当されている
戸田敦也さんが
はじめて深を訪問して、
予期していたこととは言え、
とてもびっくりされている光景を
読ませていただきました。
15年くらい前に、
戸田さんたちが立っていた同じところから
はじめて川向うに浮ぶ
香港の高層建築の大群を見ながら、
「あれが我々のお手本だ、
と電灯も寒々とした
こちらの人たちが考えるに違いない。
だから香港の返還と同時に、
香港が大陸に呑み込まれて
ゴースト・タウンになるんじゃない、
大陸の香港化がはじまるんだ」
と私が考えたとしても
決して不思議ではないと
納得してもらえたのではないかと思います。
何しろ人口3万人の漁村が
あッという間に700万人の大都会になったのですから、
上海を見るより深を見た方が
中国がどういう方向に向って動いているのか、
よくわかります。
広東省が中国の工業化の最先端を走っているのですが、
同じ広東省の中でも省都の広州より深の方が
そのまた最先端を走っているのです。
その深の町の中を走る
おびただしい数の自動車を見て、
戸田さんの奥さんが、
「自動車の株を買ったらいいわね」
とおっしゃっているのをきいて、
私は思わず失笑してしまいました。
いま中国では1年に500万台も新車がふえています。
車ができすぎてメーカー同士の投げ売りが始まり、
昨年の秋口から自動車株は
冴えない動きになってしまいました。
ですから株をやる人で
自動車株に近寄る人はほとんどおりませんが、
それでも1年に2割や3割は生産はふえ続けます。
もし中国で日本並みに
自動車の保有台数がふえたとしたら、
8億台の自動車が大陸じゅうを走りまわる日は
そんなに遠い先のことではありません。
したがって、長期投資の目で見たら、
戸田さんの奥さんの言うことが正しいのですが、
いまの中国でサイコロを
自動車というところに振る人は
ほとんどいないのです。
ここに投資と投機の違いがはっきりと見えます。
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