第1718回
スペインに中国製革靴が6千万足
私が愛用している革製品のメーカーに
ロエベ(ローエとも言います)というのがあります。
30年くらい前にはじめてマドリッドに行った時、
街の眞ん中にとても立派な店があって中に入ったら、
ジャンバやカバンやスーツ・ケースの類が飾ってあって
一目で気に入ってしまいました。
値札を見るとずいぶんいい値段がついていましたが、
当時のお金で900ドルくらい買物をした記憶があります。
スペインが革製品では
ヨーロッパでズバ抜けていることを
この時はじめて知りました。
もちろん靴もその例外ではありません。
私は20代の時に香港に亡命して
若い時から世界中のブランド商品に接してきたので、
(はじめは買うお金もなくて慾求不満が先行しましたが)
目だけは肥えて商品選びには
一家言あるようになりました。
たとえば、靴は何をさしおいても
穿き心地が第一ですから、
ヨーロッパ中のあちこちの靴を穿いてみた結果、
最終的にイタリアに落着いてしまいました。
パリやロンドンで買う場合も
結局はイタリア製を買ってしまいます。
そういう私でもマドリッドに行くと
ついロエベの靴に手が出てしまいます。
但しスペインはヨーロッパで
皮革製品の最大の産地ですが、
大半が中級品以下で、
ロエベはその中でも
例外中の例外と言ってよいでしょう。
そのスペインで、最近のこと
中国の温州から輸入される靴の倉庫に
火をつけて焼き払うという暴動が持ちあがりました。
ここ数年、革靴の本家本元であるスペインに
中国製の革靴が大洪水となって流れ込み、
スペインの皮革職人が職を失うという光景が
あちらこちらに見られるようになったのです。
昨年1年に中国から輸入された革靴は
何と6千万足にものぼるそうです。
まさかと思うかも知れませんが、
人口4千万人のスペインに6千万足ですぞ。
スペインがヨーロッパ最大の
革靴の供給国だからこそ起ったことでしょうが、
国境の壁が崩れおちると何が起こるかという
サンプルの一つと言ってよいでしょう。
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