第1717回
原料高がメーカーの優劣を分ける
「原料高の製品安」が今後、
産業界を大きく左右することは間違いないと思いますが、
それならば原料の生産に従事している
石油や石炭や木材などの株に投資しておけば
間違いないかというと
株の社会はそれほど単純にはできていません。
エネルギー不足や鉄鋼、アルミ、銅、プラスチックなどの
素材の不足によって、
それらのメーカーに陽が当るようになれば、
当然、株価もそのあとを追うことになります。
安い時にそういう動きを見越して株を買った人は
お金が儲かってホクホクでしょうが、
高値になってから株を仕入れた人は、
今後ずっと増益が続いたとしても
利廻りに見合う程度の恩恵にしか浴することはできません。
むしろ何らかの事情によって
災害にあったり減益に見舞われたりしたら、
逆に損失を蒙る可能性があります。
その一方で「原料高の製品安」で
ピンチに見舞われた業界は
生き残るために死物狂いの努力をやりますから
結果として想像をこえる収益をあげる企業と
そうでない企業に分かれます。
第一次石油ショックのあとの
日本の産業界がまさにそうでした。
自動車からカメラや腕時計に至るまで、
もし省エネと省力に全力を傾けなかったら、
アメリカをしのぐトップ・メーカーに
のしあがることは先ずなかったでしょう。
それと同じように原料高が続いて
存亡の危機に見舞われたら、
必らずその中から
画期的な技術やアイデアを持った企業が現われて、
次の時代のトップを切るようになります。
メーカー業の危機はメーカーの黄昏と考えるよりも、
選手交代の時期と考えた方が眞相に近いでしょう。
自動車業界はその好例で、
群小自動車メーカーの乱立している中国では、
原料高の中で値引き競争がはじまっていますから、
どのメーカーが淘汰され、
どのメーカーが最後まで残るか、
これからが面白くなるところです。
株をやる人にとっては成長する業種の中で
どの企業が最後まで生き残るかという見定めをして、
勝馬に賭けるところに醍醐味があると思います。
成長経済だから中国株は何を買っても大丈夫という時代から、
どこに賭けるかによって
明暗を分ける時代に入りつつあると言ってよいと思います。
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