第1716回
「原料高の製品安」がこれからの常識ですが
「資源の不足」が
世界的なスケールで起るとすれば、
世界中の物価の吃水線が上がることになりますから
物価が上向きになることは避けられなくなります。
これをデフレの解消、
インフレへのスタートと呼べないこともありません。
現にあちこちの国で
投資ブームを抑えるために
金利を上げはじめていますから、
石油の値上がりをきっかけに
景気が少々戻ることが考えられます。
しかし、私に言わせると、
アメリカの景気が上向きになったとか、
ヨーロッパの消費に明るさが見えてきた
というわけでもありません。
中国の工業化にはずみがついて、
それが中国の平均所得を押し上げたことが
きっかけになっていますから、
世界的なスケールでの景気上昇に
つながる形ではないと思います。
むしろ中国の安い商品が
アメリカ、ヨーロッパ、日本などの
先進国に攻め込む形の経済成長ですから、
素材は値上がりするけれども
先進国の最終消費財は安値競争に曝され、
素材だけ値上がりして、
メーカーは製品安に悩まされるチャンスが
ふえるのではないかと危惧されます。
ただそういう場合でも、
第一次、第二次石油ショックの中で
逆に体力のついた日本のような前例がありますから、
「原料高の製品安」に
どこのどういうメーカーがうまく対応するのか、
いまの時点で予想はできません。
ただ今回の場合は、
中国の工業化と
それに伴う消費市場の抬頭がきっかけになっていますから、
最も大きな影響を受けるのは
中国の企業と言ってよいでしょう。
たとえば、石炭とか石油とか言ったエネルギーの素材は
当分の間不足の状態が続くだろうし、
鉄やアルミや銅のような素材産業も
成長経済の初期にあった日本でそうだったように、
中国で主導権を握りつづけることが考えられます。
しかし、株式投資ということになると、
どの企業が常識をダシ抜いて
「原料高の製品安」の克服に成功するかということが
勝負を大きく左右します。
それがまた株式投資の面白いところでもあります。
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