第1712回
資源不足が「世界の工場」の方向を変えます

揚子江を堰止めてつくる
三峡ダムが完成するまでに
まだ5年や6年はかかるようですが、
それが完成しても
中国の電力不足は続くだろうと言われております。
いくら供給をふやしても、
需要がそれをオーバーしてふえるからです。

それなら電力株を買って
ジッと持っておればいいじゃないか
ということになります。
大筋においてその通りですが、
発電の70%を火力に依存している中国では
原料不足のために既に石炭の値段が
倍にも値上がりしております。
同じ電力会社であっても石炭の供給先との関係がよく、
且つ運搬が便利で安上がりなところに位置している企業は
今後も好業績をあげることができますが、
石炭の原価の中で運送費の占める割合が
70%にも及んでいますので、
このへんの計算がうまくできないと、
同じ石炭株でも天と地ほどの
ひらきが生ずる可能性があります。

このことは石炭だけでなく、
すべての資源について言えることです。
つい最近までは資源の供給業者が
資源の加工業者の顔色を伺いながら
開発にいそしんでいましたが、
一旦、資源の不足が表面化すると、
彼我の関係が逆転することが考えられます。
その場合、同じ資源でも金銀のような、
かつて通貨として珍重された貴金属と、
石油、石炭、稀少金属、更には農作物や
材木、羊毛などの生活必需品の間に
大きなひらきが生じてきます。
黄金に最も関心の強いのは
フランス人と中国人と言われていますが、
装飾や入れ歯ていどの利用価値しかない資源と
近代生活に不可欠な生活資源とでは
社会的な需要度がまるで違ってしまいます。
したがって社会的需要度から
資源株の将来性を正確にとらえることが
何より大切だと言ってよいと思います。

いまの中国では「世界の工場」としての役割が
やっと認められたところですが、
工業化のすすむ過程で、資源の不足が表面化して
主流を形成することが考えられます。
まだ皆が疑いの目で見ている間に、
次の布石をすることが何より大切です。


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