第1711回
三峡ダムを見てから中国経済を論じよう
三峡ダムをつくるために
名所旧跡が水底に沈んでしまったり、
自然が破壊されたりするのは
神に対する冒涜だという人がおります。
ガイドさんの中にも
揚子江に生息する中華鮫が
水深の変化によって3分の1に減ったといって
政府の批判をしていた人がおりました。
でも大半の旅行社は張飛廟や白帝城のような
歴史上の名所旧跡が水底に消えてしまう前に
早く来て下さいといって旅客誘致のネタにしています。
私は人類も自然の破壊をするけれど、
自然はもっと激しい勢いで
環境を一変させると思っています。
ですから稀少動物が絶滅したり、
また人類の文化財産が焼け落ちてしまったりしても
さして惜しいと思ったことはありません。
但し、劉備の死んだ白帝城や小山峡を
小船に乗りかえて逆上ることに
異議を唱えることもありません。
おかげで色んなところを見学することができました。
なかでも印象に残ったのは
かつて漁師たちが素っ裸になって
肩に縄をかけて流れに逆らって船を曳いていた場所を
突きとめたことです。
私は案内書に載っていた寫眞を見て、
たったの5人や6人だけで
どうやって揚子江の流れにさからって
大船を引っ張り上げたのだろうかといぶかっていましたが、
実際には揚子江の支流の一つで川底の浅いところを、
人力で小さな船を引っ張ったのだ
ということがわかりました。
素っ裸でやったのは
村全体が貧乏で衣服を買うお金もなかったので、
水に浸ったパンツが早く破れるのを惜しんだからだと
ガイドさんが説明してくれました。
でもいまは観光客相手の見世物になってしまったのと、
いくらか収入がふえたのとで、
短いパンツを1枚穿いて船をこぐようになっていました。
さて、次は三峡ダムの現場見学です。
バスに乗って1時間もかかるところまで
連れて行かれましたが、
名にし負う揚子江を堰止めてつくった発電所だけあって、
そのスケールの大きさに圧倒されて
皆しばらくは口をきくこともできませんでした。
最後にパナマ運河のような水門がいくつか続いていて、
高低の違う水面に船をおろす
巨大なプールの装置があります。
私は以前に見ているので
さして珍しくありませんでしたが、
眞夜中にプールの中を通るのを
皆で甲板に出て夜の更けるのも忘れていました。
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