第1693回
完成品メーカーよりパーツ・メーカーが有利なわけ
中国13億の消費市場はもちろん、
世界最大の消費市場です。
人口だけで言えば、日本の10倍、アメリカの5倍です。
経済力はもとより遥かに脆弱ですが、
でもお金のできた順序に一家が1台
テレビや冷蔵庫を買えばどういうことになるか、
また一人が1台携帯電話をもったらどうなるか、
気の遠くなるような
天文学的数字が現実になってしまいます。
それならば、中国の工業生産は何によらず
前途洋々ということになってしまいますが、
確かにそういうきざしは
家電メーカーのごく初期には見られました。
1年に資本金分の利益をあげる企業はザラでしたが、
そういう時期は多くの人々は疑いの目で見たものです。
いまは逆に中国家電メーカーの実力を
認める人が多くなりましたが、
実際に起っていることは
メーカー同志の過剰競争です。
上海の家電市場に行くとすぐにわかることですが、
たった100元か200元の差でしのぎを削っています。
そこへ鉄材やアルミやプラスチックなどの素材が
大へんな値上がりをしていますから、
どのメーカーも原料高の製品安に悩まされて、
思うように利益をあげられなくなっています。
消費がなお上向きな筈の中国市場で
完成品のメーカーは早くも
斜陽化の辛酸をなめているのです。
同じことが
まだようやくブーム期におかれるようになった
自動車産業にも言えます。
ことしの自動車の生産台数は500万台をこえ、
もしかしたら600万台にも及ぶかも知れません。
自動車はまだいくらでも潜在需要のある業界ですが、
早くも値を崩してお客の獲得に熱を入れているので、
どこのメーカーも原料高の製品安で
売上げはふえていますが、
利益率は低下しています。
自動車株が軒並み値を下げているのはそのせいです。
完成品に比べれば、
ディーゼルとかコンプレッサーなどの
重要部品のメーカーが利益をあげています。
完成品メーカーが利益をあげる前に
重要部品のメーカーが一足先に
利益を確保しているからです。
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