第1639回
日本人は上司を訴えたりしません
中国で仕事をしていると、
いつ自分の飼い犬にかみつかれるか
わからないという目にあわされることが
しばしばあります。
私は中国で自分が直接、
中国人のスタッフを監督する立場にいませんので、
直接の被害者ではありませんが、
会社はその度に厄介な目にあわされます。
たとえば、従業員の一人が突然、
自分の給料が少いから
3倍にあげてもらえないかと
総経理(社長)のところへ要求を持ってきます。
「どうしたんだね」とききかえすと、
「こんな僅かな給料では
何十年たっても自分の家が建ちません。
家を早く手に入れるために
どうしてもいまの3倍の収入が必要なんです」
「そんなことは君の個人的な事情じゃないか。
会社には会社の規定があるし、
君の隣りに坐っている人とのふりあいもある。
君がどうしても3倍のサラリーが欲しいなら、
3倍払ってくれる就職先を探がしなさい」
と当然のことながら、
総経理は引導を渡します。
するといままで大人しそうにしていた本人が
突然、労働基準局に投書をして、
この会社は何月何日と何月何日に
従業員に超過勤務手当てを払わなかったとか、
違法労働を強いたとか投書をするのです。
雇用に対してさえそうなんですから、
輸出価格が事実と違っていたり、
税金のごまかしがあったとしたら、
どういうことになるか。
会社の秘密にあたることを
会社で働いている人に
うっかり嗅ぎつけられたら、
どういうことになるか、
考えただけでも
手に汗をかくようなことが起るのです。
実際に中国で働くようになると、
そういう目に度々あわされます。
もうベテランになった進出企業の幹部は
そういうことがわかっていますから、
どうしても信用のおけるスタッフだけで
自分のまわりをかためようとします。
日本人には共産党華やかなりし時代の遺風を
うけつぐおそれがないので、
少々、ペイがふえても
それだけの値打ちがあることになります。
但し、こんなこと大っぴらに
口にできることではありませんが。
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