第1262回
ワインの飲み頃を時間短縮できたら
いまは情報化の時代というので、
人々は耳から電話器を離さないまま歩いたり、
電話器にさまざまの機能を持たせるべく、
メーカーがしのぎを削っています。
新しい機能を持たせれば、
新しい携帯電話器が売れるのですから
大産業になりますが、
その蔭にかくれて老朽化したテレホンやパソコンが
廃品化してしまうのですから、
大儲けをしていたIT関係のメーカーは
設備ごと廃品化してしまうような目にあわされます。
巨大な設備は次の瞬間、巨大ゴミと化し、
あとを続けようと思えば、
更に巨億の資金を投じなければならないのですから、
いくらお金を儲けさせてやると言われても、
情報産業の中心に位置している経営者たちは
夜もおちおち寝てはおられないのではないでしょうか。
それに比べると、同じく技術の進歩が不可欠ですが、
ハイテクというよりはハイタッチに値する創意工夫は
いまの時代を生きる人たちには必要なものだし、
また新しい付加価値をもたらすものでもあります。
たとえばワインは飲み頃になるまでに
10年から20年の歳月が必要なことを
経験が私たちに教えてくれていますが、
それを瞬間的にとまでは言いませんが、
物理的な処理をすることによって
うんと時間の短縮をして
ほぼおなじ結果をもたらすことができたとしたら、
ワイン業界にとっては
大革命になるのではないでしょうか。
假りにそういうことが起っても、
古い保存法に固執して
10年も20年も蔵の中に寝かせたワインは
依然として珍重されるでしょうが、
いくら手打ちソバが人気の的であるとしても、
微菌の処理によってソバの鮮度が
1週間も2週間も保持できるようになったら、
ソバの売れ方に革命的な変化が起ることは間違いありません。
それと同じように、ワインの味のレベルが
短期間の処理で大きく向上すれば、
ワインの売れ方がワインの醸造方法を
一変させることも考えられます。
そんなワイン業者を卒倒させるようなことを
いきなり考えなくとも、
食品を遠くから運ぶ必要が起れば
食品の扱い方が大きく変わることは間違いないでしょう。
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