第1260回
歳月と温度を味方にして生きよう
私の家のワイナリーの温度は
いつも15度に保たれています。
15度が葡萄酒を長期にわたって保存する
一番いい温度とされているからです。
何年かに一ぺん、その年につくられたワインが
一番いいワインだという年があって、
その年のワインをケースで何箱か買って
ワイナリーの中に入れておきます。
最近では2000年がいい年ということになっているので、
ついこの間も2000年物を10箱ほど仕入れて
ワイナリーの一番底に押し込みました。
でもこれらのワインが飲み頃になるのは
2010年から2020年ということですから、
うちの娘や息子たちの口に入る可能性の方が強く、
ワインを買う時も自身それほど熱心ではありませんでした。
万一、まだ生きていた場合の保険に買ったようなものです。
いま私は85年物、86年物のワインを飲んでいます。
87年にボルドーを訪問した折りに
現地で注文した物がちょうど飲み頃になったのです。
そのあと89年のワインを買いましたが、
まだ箱のまま手づかずに眠っています。
その中には89年のオー・ブリオンもまじっていて、
私は一瓶1万円で買ったのに、
ワイン商の価格リストを見ると、
何と10万円に値上がりしています。
それを発見した時、
「儲かった!」と小踊りしましたが、
考えて見たら「こんな高いワイン、飲むのはもったいない」と
ケチな根性を起しますから、
トクをしたのか、損をしたのか、わかりません。
只1つ覚えたことは
いい年のワインを安い時に仕入れて飲み頃になるまで
じっとワイナリーの中に寝かせておくことです。
ずいぶん気の長い話ですが、
馴れると何でもないことをやっていることになります。
歳月と温度を無視して生きるより
それを味方にして生きる方が
効果的で楽しい生き方になるということです。
いまその延長線上で、
私は雲南省にシャトーをつくろうと考えていますし、
また温度による味の革命に
挑戦しようと考えているところです。
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