第1253回
水蒸気で微菌や農薬を吹っとばせ

SARSで東京に足止めをくらっていた間、
ずいぶん色んな商売のタネを持ち込まれました。
いまは大きな変革期なので、
よほど革新的なアイデアでないと、
新商売として成り立たないし、
従って心を動かされることはありません。
グローバル化の時代ですから、
1つは2国以上にまたがって工場を移動したり、
商取引を展開するビジネスです。
もう1つはいままでに懸案になっていた
技術やノウハウを改善することによって
不可能を可能にしたり、
コストダウンをもたらす仕事です。

最近、私が興味を持ったベンチャーの1つに
水蒸気による食品の瞬間殺菌というのがあります。
いまから3年前に、輸入ソバの殺菌設備をつくりたいから
力を貸してくれないかと申し込まれたことがありました。
わたしはじゃが芋の芽がでないように
放射線をかける工場を見学したことがありますが、
食品の長期保存のための技術がどうなっているのか
全く無知なので、話を持ち込んできたご本人を
唐津一先生に紹介して判断を仰ぎました。
そうしたら先生から一言のもとに蹴られてしまいました。
それっきり消息も絶えたので
私はてっきり一件落着と思っていたところ、
最近になってご本人から連絡があって、
この3年間、研究に研究を重ねて、
遂に水蒸気の温度を350度まで上げて
5秒間で食品の表面についた
微菌や農薬を処理する装置をつくったから、
見に来てくれないかと言われました。

もし本人の説明通りの効果があったら、
これは画期的な発明かも知れません。
高温の水蒸気をかけたら
煮えて変質すると思うかも知れませんが、
5秒ですから表面の殺菌効果があって
中身は全く被害がないのです。
ソバの実には物凄くたくさんの微菌が付着していて、
手打ちソバが珍重されるのも、
もとを言えば、腐敗しやすいからです。
ソバの微菌の問題もかなり解決されますが、
国をこえて入ってくる食品の大半に同じ問題がたくさんあります。
オレンジやグレープ・フルーツにしても、
また、ほうれん草や枝豆の農薬にしても
外国から農産物を輸入する際のトラブルのもとになっています。
それが一挙に片づくとしたら、これは大変な朗報ですね。


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2003年8月15日(金)

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