第1251回
携帯電話は礼を失するためにある

いま一番不愉快な思いをさせられるのは
目の前で携帯電話をかける人です。
目下の人の前でも嫌ですが、
目上の人の前ではなお更のことです。

話をするためにわざわざ時間をとって
向いあっているのですから、
一緒に話をしている間くらいは、
受話器をオフにしておくのが礼儀というものです。
それができないような緊急な用事を抱えている人の場合は
「ちょっと失礼」と言って立ち上がって
ドアの外へ出て通話をします。
その場合でもダラダラと長電話をしたのでは、
相手に悪い印象をあたえます。
うちの場合は、
堅くそういうことを言い含めていますので、
私の目の前で長電話をする人は1人もおりません。

ところが、世の中にはそういうことに
全く無神経な人もおります。
自分が社長をしておれば、
咎め立てをする部下は1人もいないでしょうが、
それが習い性になって
お客の前で会話を中断して
電話口に出る人を時々、見かけます。
その場でやめてくれとも言えませんが、
「育ちの良い人だな」と内心バカにしてしまいます。
そして、「こういう人とはできるだけ
一緒に仕事をしないことにしよう」
という気を起してしまいます。

むろん、世の中には
私のような反応をする人ばかりいるわけではありません。
携帯電話があれば便利なこともありますが、
デメリットもたくさんあります。
人に邪魔されないで自分だけで考え事をしたい時は
電話なんかない方がいいのです。
私のロールス・ロイスには
20年も前から電話がありましたが、
私はわざわざそれをはずしてもらいました。
以来これだけ携帯電話が普及しても、
私は電話を持っていたことがありません。

どうしても連絡をする必要のある時は、
私の秘書が電話をかけます。
急用のある時も秘書が私に伝えてくれます。
電話を持っていないのですから、
人前で電話をかけて不愉快な思いをさせる心配もありません。
どうして電話機を持っている必要があるのでしょうか。


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2003年8月13日(水)

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