第1250回
隣りの座席に坐るのが礼儀です
礼儀作法には昔から守られていて、
いまも通用しているものもあれば、
時代が変わって廃れてしまったものもあります。
逆に新しい生活様式が普及したために、
新しく生まれてきたものもあります。
昔の日本人は畳の上で生活をしていましたから、
座敷で坐って話をするのが普通でした。
坐り方にも上座と下座の区別があって、
床の間を背中にした側が上座です。
床の間には掛軸や花が飾られていますが、
上座に坐った人には見えません。
ですから上座に坐った人は
床の間と同じように飾り物なんですね
と私は冗談を言ったことがあります。
また上座に坐った人はあぐらをかいても
咎め立てをする人はおりませんが、
下座に坐る人は正座をしなければなりません。
畳に慣れないいまの若い人なら
たちまち足がしびれて
立ち上がれなくなってしまいます。
椅子やベッドが生活の中に取り入れられるようになると、
こうしたマナーはかなりゆるめられるようになりました。
いまでは日本料理屋に行っても、
椅子席に坐る人が多くなりましたし、
畳の場合でも掘り炬燵をつくっているところが
多くなりましたので、
足のしびれるチャンスはうんと少くなりました。
かつて大根足は日本女性の特徴の1つでしたが、
いまでは八頭身美人も珍しくなくなるほど
スラリとした女性が多くなっています。
その代わり自動車に乗るチャンスがうんとふえて、
今度は自動車に乗る場合のエチケットが
問題になってきました。
タクシーやハイヤーに乗る場合は
うしろのドアがあけば乗り込むだけでいいのですが、
オーナー・ドライバーの場合は
たとえ本人がうしろのドアをあけてくれても
「いいえ、お隣りの座席に坐らせて下さい」と言って
ドライバーの隣りに坐るが礼儀です。
あわてて隣席においた荷物を
うしろに移すことがありますが、
ドライブするご本人は内心とても喜んでくれます。
|