第1166回
男の月給は女性の月給に鞘寄せされます

私が女性は政治家に向いている理由としてあげたなかには
「朝から晩まで同じ演説をくりかえしても
少しも疲れを見せない点でも、
家事労働のくりかえしに似ているから、
政治は案外女性向きの職業ではないか」
という一説があります。

「もっとも政治家は、数に制限があるから、
新しい職場としては、
多くの女性を満足させることができない。
一握りのとんでる女性たちが、
女性の代弁者として議会入りをすることは
充分、考えられるし、期待もできるが、
もっと多くの女性に適した職場と言えば、
育児とか看護とか料理とか、
主としては生活とかかわりのある分野と、
それからもう一つは、
美術とか、ファッションとか、デザインとか、
主として美とかかわりのある分野ではなかろうか。
性別と無関係に、女が男と肩を並べる職場が
将来いくらでもできてくるだろうが、
女性に適した職場で勝負すれば、
女性が優位に立つことは間違いない」

この文章を家庭画報に書いてから
既に20年の歳月がたってしまいましたが、
いま私のオフィスを見てもほとんどのスタッフが女性です。
香港、台北、北京、上海の方が一足先に女性群になって、
東京が一番最後になりましたが、
どこのオフィスも女性の方が定着率もいいし、
きめられた仕事を着実にこなしてくれます。
女性には妙な野心もありません。
家事育児に比べたら、オフィスの仕事など
うんと楽なのかも知れません。

となると、これからの仕事は
政治から年寄りの面倒、新幹線の切符切り、
銀行のお金の出し入れ、
はてはデパートやスーパーのレジに至るまで
ほとんどが、女性で間に合ってしまいます。
あと残っている仕事と言えば
新しい事業の開発くらいなものですが、
そのほとんどは海外もしくは、
海外と日本を結ぶ線上にあります。
そういう時勢の流れを無視して
男性が女性と国内で職場の奪い合いをするとなれば、
女性のサラリーが男性並みになるのではなくて、
男性のサラリーが、女性のサラリーに
鞘寄せされることになるでしょう。