第428回
貧乏神に追われて工場の海外大移動

デフレというのは豊かな社会の貧乏神みたいなものですね。
一ぺん、デフレに居座られると、
なだめてもすかしてもおどかしても
容易に出て行ってくれなくなります。
この調子だと、当分、
貧乏神と一緒に暮らさなければならなくなりますから、
覚悟が必要です。

インフレの時に物を安くすると
皆がとびつきますが、デフレの時に安売りをすると、
もっと安くなるのではないかと却って客足が遠ざかります。
あっても無くてもよいようなものなら
いくら安くしてもお客が寄りつきませんが、
毎日使う食料品や日用品のようなものなら、
安いか、他より品質がよければ、
お客がドッと押し寄せます。

ですからデフレのなかでうまく商売をやろうと思えば、
安く売れるようにコストを引き下げるか、
同じ値段でもっと良質のものを供給するか、
どんな値段でも消費者が喜んで買ってくれる
売れ口商品を提供する以外に道はありません。
こんなこと商売をやっている人にとっては
常識みたいなものですが、
なかでもコストを安くして売れることは
デフレ時代の鉄則みたいなものです。

コストを下げる方法は色々ありますが、
一番簡単明瞭な方法は
コストの安くてすむところで生産することです。
もともと商売とは安く仕入れて高く売ることですから、
日本より物価の安いところに行ってつくって、
日本に持って帰って来て売ればよいのです。
私は30年も前から、国際間の物の移動が自由になれば、
必ず国際間の格差を利用した商売が
やれるようになると主張して、
コスト高に悩む日本のパーツ・メーカーに
海外に進出することをすすめ、
自分でも台湾に工業団地を建設して
企業誘致をしたことがあります。

コスト差が一番はっきりしているのは農産物ですが、
日本は農産物の輸入にきびしい関税もしくは
輸入障壁を設けて輸入ができないようにしたので、
とりあえず工業分野で大移動をアドバイスしたのです。


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2001年5月12日(土)

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