第370回
3分間スピーチで差別化がはじまる

人前で喋ることになれていない人は演壇の上に立つと、
すっかりあがってしまいます。
吉行淳之介さんなんか、1時間の講演を頼まれて、
事前に喋ることをメモにまで書いたのに、
いざ演壇にあがったら、
1分間で喋ることがなくなってしまって
立往生したときいたことがあります。

スピーチはそんなに難しいものではありません。
馴れの問題だと言ってよいでしょう。
よく会社の社長さんたちに
「どうやって喋ればいいのですか」
ときかれますが、
「聴衆が千人いても、
 1人の人とお話をしていると思えばいいんですよ。
 たとえば、席を見渡すと、
 こちらの話にいちいち頷いてくれる人があるでしょう。
 その人だけと話をしていると思えばいいんです。
 千人いても1人1人は1人なんですから」
 
私がいくらそう説明しても、
自意識過剰の人はあがってしまうようですが、
講演に限らず、人と話をしている時は
手短に言いたいことだけ言う要領を覚える必要があります。
とりわけ自分より目上の人は大抵、忙しい人ですから、
くどくどと部下の言うことに耳など傾けてはおられません。
上司に報告をする時、短い時間に
核心をついた話し方のできる人は
必ず気に入られて出世をします。

だから学生時代に弁論部に入って
上手なスピーチをするよりも、
1つのテーマを3分間で喋る修行を積む方が
のちのちずっと役に立ちます。
「3分だよ、3分たったら、鐘を鳴らすからね」
とお互いに鐘の鳴らしあいをしたら、
時間に対するセンスがあるようになるでしょう。
時間の節約のできる人は
効率を重んずるようになりますから、
お金の節約もしぜんにできるようになります。
お金の節約ができれば、経営もできるようになりますから、
しぜんに上司から引き立てられるようになります。
たかが3分間スピーチと侮ることなかれ。
入社試験のところで既に差別化はついてしまうのです。


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2001年3月15日(木)

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