第324回
毎日が天気ということはありません
アメリカの好景気が10年も続いたのは、
経済学の学識から見たら、奇跡的なことです。
いままでに考えられなかったことですから、
「これはニュー・エコノミーだ。もうビジネス・サイクルに
左右されるようなことはなくなる」と
豪語する経済学者の声もきかれるようになりました。
でもいままでになかったようなことが起ったら、
世の中がすっかり変わってしまうというほど
世の中は単純にはできておりません。
世の中は変転きわまりないもので、
変わることも変わるけれども、
変わらないことは変わらないで、また同じことが
くりかえされることもあります。
空に天気があるように、商いの世界には景気があるし、
人の浮沈には人気があります。
天気と同じように、景気も人気も
いつも同じということはないのです。
そういう世の中に生きていますから、
私たちは天気にも景気にも人気にも大きく左右されます。
その度にさまざまな目にあわされるので、
何とかその影響を受けないですむ方法はないものかと
思案します。
夏は冷房、冬は暖房といったエア・コンディションは
そうした変化の中で快適にすごすために
人間が考え出した装置です。
しかし、エア・コンが普及したからと言って、
人間が天気を克服してしまったわけではありません。
それと同じように、できるだけ景気不景気の影響を
受けないですむように努力したとしても、
それで景気不景気がなくなってしまうことにはなりません。
不景気の到来を少し先に延ばすことができたとしても、
不景気にならないですむ方法はないのです。
先へ先へと不景気になることをくり延べてきたアメリカでも
どうやらそろそろ逆の方向に動く段階に
入ってきたようです。
既にアメリカの経済は下り坂にさしかかっています。
問題は坂をころがりおちるのか、
それともソフト・ランディングなのか、
いま世界中が堅唾をのんで目を見張っているところです。
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