第317回
失われた買い物天国としての香港

この30年間、香港はとてもチャーミングな
港のある町でした。
私自身が香港の住人でなく、旅行者として
短いバケーションを楽しむ立場に
おかれていたせいもあります。

50年前に生命カラガラ香港に亡命してきて
6年ほど住んでいたことがあります。
その時の経験を下敷きにして書いた
「香港」という小説で直木賞をもらい、
のちに中央公論に
「わが青春の台湾、わが青春の香港」という本も
書いていますので、
お読みいただいている方もあると思いますが、
あの頃の香港よりは次々と高層建築が林立して、
100万ドルの夜景が話題になってからの香港の方が
旅行者にとっては魅力のある町だと思います。

港の美しい夜景も、リオデジャネイロ、シドニーと並んで
世界3大夜景の1つですが、
世界中の商品が無税で輸入される自由港でしたから、
世界中のブランド商品が本国よりも
もっと安い値段で手に入る買物天国でした。
アジアで一番早く金持ちになった日本人が
先ず香港に押しかけ、続いて、台湾人、韓国人、
いまでは大陸の中国人と入れかわっています。

一頃のペニンシュラ・ホテルのアーケードは連休になると、
日本人観光客だけで溢れていました。
啓徳飛行場からホテルのロールス・ロイスに迎えられて
ホテルにチェックインをして、
そのまま朝から晩までアーケードでショッピングをし、
食事はホテル内のレストランで
広東料理からフランス料理まで
3度3度、嗜好を変え、
一歩も外へ出ないでまたロールス・ロイスで
飛行場まで送ってもらっても、
ちゃんと香港に来た目的は果たしたことになると
言われたものでした。

しかし、香港ドルの実質上の切り下げにストップがかかり、
不動産の上昇による家賃の上がりすぎで、
ブランド商品が大幅値上がりをしたのと、
逆に不景気になった日本で
ブランド商品がダンピングされるようになったのとで、
わざわざ香港まで買物に来るメリットが
失われてしまいました。
香港はもはや買物天国ではありません。
時々、ペニンシュラ・ホテルに行ってみますが、
日本人はまばらですね。


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2001年1月21日(日)

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