第302回
1万人に1人の確率に賭けるな

1万人に1人いるかという天才的な芸術家や
スポーツマンになることは誰でも望むことです。
昔は悲劇の天才というのがありましたが、
いまは媒体が発達して、
次々とそういう天才たちを発掘するので、
実力があればすぐにも頭角を現します。
ゴルフの世界的なコンペで優勝すれば、
莫大な賞金にありつけるだけでなく、
コマーシャルに出れば、広告収入もバカになりません。
野球選手の年収だって同年輩の若者たちから見たら、
世の中こうも不公平にできているのかと
言いたくなるほどの金額です。

たかがボールを投げたり打ったりするだけで、
世の中のためになっているわけではありません。
それでも法外な収入に恵まれるのは
世の中が豊かになって、
人々が目をたのしませた代償として、
1人が100円、帽子の中に投げてあげただけで、
3億円、5億円になってしまうのです。

足でボールを蹴るのも、大きな相手を土俵下に転がすのも、
目を楽しませるエンターテイメントだと思えば、
そのくらいのお金は惜しくはないでしょう。
新しい収入の道は、物をつくって買ってもらうよりも、
人を楽しませるサービス業の方に
大きくひらかれているのです。

だから息子の尻を蹴って東大の試験を受けさせるより、
ボールの投げ方がうまいか、
ボールの打ち方がうまい息子を生んだ方が
親は楽ができます。
そんな時代になってしまったせいで、
子供は子供で名選手になることを夢見ると、
親は親で息子が勉強のできるよい子になるよりは、
甲子園で優勝できるような高校野球チームの
花形投手や打手になることを望みます。

でもよく考えてみて下さい。
そういう確率は1万人に1人もあるかどうかですよ。
そんな夢みたいな話に乗るよりも、
自分にできることを考えて下さい。
世間がどんな人材を望んでいるか、
自分にできることは何かをよく研究して
それに一歩近づく工夫をした方が勝ちです。


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2001年1月6日(土)

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