第300回
世間で不足している人材とは

いま万年不足をきたしているのは
コンピューターの技術者でしょう。
コンピューターの普及するスピードが早くて
技術者の供給がそれに追いつかないからです。
そのためにどこの国でもコンピューター要員の居留には
門戸をひらいているし、
日本のような鎖国の伝統が強く残っている国でも
コンピューターのエンジニアには
特別に入国の許可をあたえています。

それだけにコンピューターの普及に従って、
それを自由に操作のできる人は
大へんな勢いでふえています。
コンピューターを動かすだけなら
自動車の運転と同じように、
誰にでもできるようになる時がくるでしょう。
或る時、私は瀋陽にある東大アルパインという
中国一のソフトの会社を見学に行ったことがあります。
10万坪もある広々とした敷地内に
バカでっかい研究所の建物がいくつか建っていましたが、
ソフトの会社ですから、
機械設備らしいものは何もなく広い建物の中には
コンピューターがぎっしりと並んでいて、
その前に若いエンジニアが座っているだけでした。

この会社は恐らく
中国で一番名の知られたソフトの会社ですが、
中国各地からソフトの注文が大量にとび込んでくるのは、
この会社を大学の小さな研究室から
上場企業にまで引っ張りあげてきた
劉積伝という1人の教授のおかげです。
ソフトの会社なんて頭脳の生み出すものがすべてですから、
コンピューターと睨めっこをしている
1000人のエンジニアよりも、
その人たちの頭脳をどう動かすかを
指揮している人の頭脳によって決定されるものです。

きっとそのうちにコンピューターのエンジニアなんか
掃いて捨てるほどふえると思います。
1000人のエンジニアよりも、
1000人を一糸乱さず動かすことのできる1人の仕事師が
要求されているのです。
そういう人間はなにもコンピューターの業界だけが
必要としているものではありません。
オールド・エコノミーの分野でも、
というより大小を問わずどこの会社でも
欲しくて欲しくてたまらない人物なんです。
そういう人物が不足しているのですから、
そいう人材になることを志せばいいのです。
簡単な話ですよね。


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2001年1月4日(木)

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