第246回
デパートもスーパーも振り出しへ
この頃はデパートもスーパーもかたなしですね。
デパートの最大手だった三越がゴルフ場開発に失敗して
会長や社長まで総退陣したかと思ったら、
今度はスーパーの王様ダイエーで創業者と
再建のために迎え入れた社長が仲間割れをして、
とうとう両方とも
代表取締役を下りる始末になってしまいました。
三越の場合は雇われ経営者が
会社の財産に大穴をあけた責任をとって
辞めただけのことですが、
ダイエーの場合は3坪の店からはじまって
日本一の売上げをあげるようになった立志伝中の人が
生き恥をかかされる話ですから、淋しいことです。
荘子を見ると「富則多事、壽則多辱」
(金持ちになるとトラブルが多い、長生きすると恥が多い)
という言葉がありますが、
だんだん年をとってくると
私とて他人事とは思えなくなってきます。
きくところによると、有利子負債を減らす公約をして
不動産や株の処分をすすめてきたところ、
それだけでは不足することがはっきりしてきたので、
創業者のファミリー財産に手がつきそうになったところから
トラブルが起ったそうです。
真偽のほどはわかりませんが、
聖域にふみこんだら、
蛇にかまれることだってあるでしょうね。
そういう思いがけないことが起るのも、
利害の不一致というよりは、デパートやスーパーの商売が
思うように行かなくなったことが最大の原因です。
デパートやスーパーは人の欲しがる物を揃えれば
飛ぶように売れた時代が花形だったのです。
いまは「何でも揃っているけれど、
消費者が欲しがっている物だけがない」
と言われています。
メーカーがつくった物をお客との間に介在して売る商売は、
クレームがつけばメーカーに転嫁するし、
売れ残りが出ればメーカーに返品するだけですから、
メーカーも売れた分だけで
採算のとれる値づけをするにきまっています。
そういう商売の仕方では
消費者に受け入れてもらえなくなったので、
デパートもスーパーも商売のやり方をもう一度、
振り出しに戻すよりほかありませんね。
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